【勤務表作成】とは?何が含まれる?

勤務表作成とは、企業や組織において、従業員の労働時間、出勤日、休日、担当業務などを計画し、一覧にした表を作成する作業全般を指します。
これは、単に誰がいつ働くかを決めるだけでなく、業務に必要な人員を確保し、法令遵守(労働時間規制、休憩時間など)を行い、従業員の公平性や働きやすさを考慮するための重要なプロセスです。

勤務表に含まれる情報は多岐にわたりますが、一般的には以下のような項目が含まれます。

  • 氏名・所属:勤務を行う従業員の氏名や所属部署。
  • 日付・曜日:対象となる期間の日付と曜日。
  • 勤務時間:各従業員のその日の勤務開始時間と終了時間。
  • 休憩時間:勤務中の休憩時間の長さや取得タイミング。
  • シフト区分:早番、遅番、夜勤、日勤などのシフトの名称。
  • 担当業務・配置場所:その日またはその時間帯に担当する業務や配置される場所。
  • 休日:その従業員の公休日または取得した有給休暇など。
  • 備考:特記事項、希望休、遅刻早退の予定など。

勤務表の形式は、日単位、週単位、月単位など、業種や組織の運用によって異なります。また、固定シフト制、変形労働時間制、自由シフト制など、採用している勤務体系によって、作成の複雑さや必要な情報も変わってきます。

なぜ勤務表作成が必要?難しい理由は?

勤務表作成は、企業の運営において不可欠な作業です。その主な理由は以下の通りです。

  1. 必要な人員の確保:業務量や来店者数、稼働時間帯に応じて、必要なスキルを持つ従業員を適切な人数配置するために必須です。人員不足はサービスの質の低下や機会損失につながり、人員過多はコスト増につながります。
  2. 法令遵守:労働基準法に基づき、労働時間の上限、休憩時間の付与、休日取得、深夜労働に関する規制などを守るために、勤務時間を正確に管理・計画する必要があります。
  3. 従業員の公平性・働きやすさ:特定の従業員に負担が偏らないよう、労働時間や夜勤回数、休日などを公平に割り振るために重要です。また、従業員の希望休を考慮することで、モチベーション維持や離職防止にも繋がります。
  4. コスト管理:人件費は企業の大きなコストの一つです。勤務表を適切に作成することで、無駄な残業を削減したり、業務量に応じた最適な人員配置を行ったりすることが可能になります。
  5. 業務効率化:誰がいつ何をするかが明確になるため、従業員は自身の役割を把握しやすくなり、業務がスムーズに進みます。

一方で、勤務表作成が難しいと感じられる理由は多々あります。

勤務表作成が難しいと感じられる理由

  • 多様な条件の考慮:従業員のスキル、雇用形態、労働契約上の制約、希望休、法定休日、休憩時間、連続勤務日数、特定の時間帯に必要な資格保持者など、考慮すべき条件が非常に多い。
  • 人員変動への対応:急な欠勤や退職、入社などに合わせて柔軟に調整する必要がある。
  • 公平性の担保:人気のあるシフトや負担の大きいシフトを公平に割り振ることが難しい。
  • 法改正への対応:労働基準法の改正や業種特有の規制変更などに常に対応する必要がある。
  • 手作業の限界:エクセルや紙ベースでの作成では、条件のチェック漏れや計算ミスが発生しやすく、大規模なチームや複雑なシフトに対応しきれない。
  • 調整の負担:作成後に従業員からの変更希望や苦情が発生し、再調整に多大な時間を要する。

これらの複雑な要因が絡み合うため、勤務表作成は経験やノウハウが必要とされる、時間と労力のかかる作業となりがちです。

どのような情報が必要?

正確かつ効率的な勤務表を作成するためには、事前に様々な情報を収集・整理しておく必要があります。主な必要情報は以下の通りです。

事業・業務に関する情報

  • 営業時間・稼働時間:店舗や施設の開閉時間、コールセンターの受付時間など。
  • 業務量予測・必要人員数:時間帯別、曜日別、イベントなどによる業務量の変動予測と、それに伴う必要な最低人員数、最適な人員数。
  • 必要なスキル・資格:特定の時間帯や業務に必要な資格(例:サービス提供責任者、特定の機械操作資格など)や、経験・スキルレベルの情報。
  • 拠点・場所:複数の拠点がある場合、それぞれの場所で必要な人員数やスキル。

従業員に関する情報

  • 氏名・連絡先:基本的な従業員情報。
  • 雇用形態・契約内容:正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態と、契約上の最大労働時間、固定シフトの有無など。
  • 勤務可能な曜日・時間帯:パート・アルバイトの場合、本人が勤務可能な希望や制約(例:〇曜日の午後のみ、〇時以降は不可など)。
  • 希望休・有給休暇の申請:事前に提出された休暇希望。
  • スキル・担当可能業務:各従業員が対応できる業務や専門スキル。
  • 過去の勤務実績:以前の勤務表やタイムカードから、実際の労働時間や休日取得状況。
  • 体力・適性:夜勤の適性や体力的に負担の大きい業務への適性など、考慮すべき個人的な事情(本人の同意のもと)。

ルール・制約に関する情報

  • 労働基準法:法定労働時間、休憩時間、休日、深夜労働、割増賃金に関する規定。
  • 就業規則・労働契約:会社独自の労働時間規定、休日規定、シフトに関するルール。
  • 36協定:時間外労働・休日労働に関する労使協定の内容(上限時間など)。
  • 業界・業種特有の規制:医療・介護、運送業など、特定の業種に適用される独自の労働時間規制や配置基準。
  • 従業員間の取り決め:特定のシフトのローテーションに関する内規など。

これらの情報を漏れなく収集し、アクセスしやすい形で管理することが、スムーズな勤務表作成の第一歩となります。特に従業員の希望や制約については、正確に把握することがトラブルを防ぐ上で非常に重要です。

勤務表作成はどこで行われる?

勤務表作成を行う場所や担当者は、組織の規模や構造、業種によって異なります。

  • 現場責任者・シフトリーダー:店舗、病棟、工場ラインなど、シフト制で稼働する現場の責任者が、その部門の人員を把握し、日々の業務に必要な勤務表を作成するケースが最も一般的です。現場の状況や従業員の特性を把握しているため、実情に合った勤務表を作成しやすいというメリットがあります。
  • 人事部門・労務担当者:全社的な視点から、労働時間管理や法令遵守を厳格に行う必要がある場合に、人事部門や労務担当者が一元的に管理・作成することがあります。特に、複雑な雇用形態の従業員が多い場合や、全社の労働時間を見える化したい場合に有効です。
  • 専門のシフト作成担当者:大規模なコールセンターや病院など、シフトが非常に複雑で人員規模も大きい場合に、シフト作成を専門に行う担当者を置くことがあります。

物理的な場所としては、事務所内のデスクで行われることが多いですが、近年ではクラウド型の勤務表作成システムを利用することで、自宅や外出先から作成・確認を行うことも可能になっています。

作成にはどれくらいの時間がかかる?コストは?

勤務表作成にかかる時間やコストは、以下の要因によって大きく変動します。

  • 従業員数:従業員が多いほど、考慮すべき要素が増え時間がかかります。
  • シフトの複雑さ:固定シフトか、日によって時間帯が異なるか、夜勤があるかなど、シフトパターンが複雑なほど時間がかかります。
  • 作成方法:手書き、エクセル、専用システムなど、使用するツールによって効率が全く異なります。
  • ルールの多さ・厳格さ:考慮すべき制約条件(特定の組み合わせはNG、連続勤務は〇日まで、など)が多いほど、チェックや調整に時間がかかります。
  • 従業員の希望休の数:希望休が多く、それを可能な限り反映しようとすると調整に時間がかかります。

具体的な時間としては、例えば数人~十数人の小規模なチームで比較的単純なシフトであれば、手作業やエクセルでも数時間で終わるかもしれません。しかし、数十人、数百人の従業員を抱え、複雑なシフトパターンや多様な雇用形態が混在する場合、エクセルでの作成では丸一日、あるいは数日かかることも珍しくありません。従業員の希望を取りまとめたり、調整したりする時間を含めると、さらに多くの時間を要します。

コストについては、これも作成方法によって異なります。

  • 手書き・ホワイトボード:用紙や筆記具のコストのみ。ほぼ人件費のみ。
  • エクセル・スプレッドシート:ソフトウェアのライセンス費用(多くの企業では既存)と、作成者の人件費。関数やマクロを組む場合はその開発コストがかかる場合も。
  • 勤務表作成システム・ツール
    • 導入費用:初期設定やデータ移行にかかる費用。
    • 月額・年額利用料:クラウド型の場合、従業員数に応じた月額または年額のサブスクリプション費用が一般的。機能や規模によって幅広く、月額数千円~数十万円以上となる場合も。
    • サポート・保守費用:システムの運用に関するサポート費用。
    • トレーニング費用:システムの使い方を習得するための研修費用。

一時的なコストはかかりますが、専用システムを導入することで、作成時間の削減、エラー率の低下、法令遵守の強化、従業員満足度の向上など、長期的に見れば人件費削減や業務効率化によるコストメリットが期待できます。

勤務表はどのように作成する?主な方法

勤務表の作成方法にはいくつかの選択肢があり、組織の規模や要件に応じて最適な方法が選ばれます。

1. 手書き・ホワイトボード

最も原始的な方法です。紙のテンプレートやホワイトボードに、直接従業員の名前と勤務時間を書き込んでいきます。

  • メリット:特別なツールが不要で手軽に始められる。現場の状況を共有しやすい(ホワイトボードの場合)。
  • デメリット:修正が大変。情報の共有がしにくい(紙の場合)。集計や分析が困難。法令やルールのチェックが手動になりミスが発生しやすい。公平性の判断が属人的になりがち。紛失や汚損のリスク。

小規模でシフトパターンが非常にシンプル、かつ急な変更が少ない職場に限られる方法です。

2. エクセル・スプレッドシート

多くの企業で利用されている方法です。エクセルやGoogleスプレッドシートで勤務表のテンプレートを作成し、セルに情報を入力していきます。

  • メリット:多くの人が使い慣れている。既存のソフトウェア資産を活用できる。関数や条件付き書式を使えば、ある程度の自動化やチェック機能を持たせることが可能。
  • デメリット:入力ミスや数式の間違いが起きやすい。複雑なシフトパターンや多様なルールに対応しきれない。リアルタイムでの複数人による同時編集や情報共有が難しい。希望休の収集や反映、変更依頼の管理などが別途必要になる。法令遵守や労働時間の自動チェックが完全ではない。規模が大きくなるとファイルが重くなる。

手書きよりは効率的ですが、複雑さが増すにつれて管理が煩雑になり、作成者の負担が大きくなる傾向があります。

3. 勤務表作成システム・ツール

勤務表作成に特化した専用のソフトウェアやクラウドサービスを利用する方法です。

  • メリット
    • 自動化・効率化:従業員の条件、希望休、必要な人員数などの設定に基づき、自動または半自動でシフト案を作成する機能がある。
    • 法令遵守の徹底:労働時間、休憩時間、休日などの法令や社内ルールに違反がないかを自動でチェックし、警告してくれる。
    • 従業員との連携:Webやアプリを通じて、従業員自身が希望休を申請したり、確定したシフトを確認したりできる。シフト交換機能を持つものもある。
    • 情報の集約・共有:関連情報(従業員情報、スキル、希望など)が一元管理され、関係者間でリアルタイムに共有できる。
    • 集計・分析機能:労働時間、残業時間、人件費などを自動で集計し、レポートを作成できる。
    • 柔軟な変更対応:急な変更が発生した場合も、システム上で容易に修正し、関係者に通知できる。
  • デメリット:導入費用や月額利用料がかかる。システムに慣れるまでのトレーニングが必要。自社の運用に完全に合致するシステムを選ぶのに時間がかかる場合がある。

従業員数が多かったり、シフトが複雑だったり、法令遵守が特に重要だったりする企業では、システム導入によるメリットが大きいと言えます。

作成時に考慮すべきポイントや注意点は?

勤務表作成は、多くのバランスを取る作業です。以下のポイントや注意点を押さえることで、より良い勤務表を作成できます。

1. 法令・ルールの最優先遵守

  • 労働基準法で定められた法定労働時間(週40時間)、休憩時間(6時間超勤務で45分、8時間超勤務で1時間)、週1日または4週4日以上の休日(法定休日)は必ず守る必要があります。
  • 36協定で定めた時間外労働の上限を超えないように注意します。
  • 就業規則や雇用契約で定められた内容(例:パートの労働時間上限、特定の日の勤務可否など)を遵守します。
  • 業界特有の規制(例:介護事業所の人員配置基準)がないか確認します。

法的な制約を守ることは、従業員を守るだけでなく、企業の信頼性や法的リスク回避のために最も重要です。

2. 必要な人員配置とコスト効率の両立

  • 業務量予測に基づき、必要なスキルを持つ従業員を過不足なく配置します。人員不足はサービス低下、人員過多はコスト増に直結します。
  • 人件費予算を意識し、特に割増賃金が発生する深夜労働や時間外労働が過剰にならないよう調整します。

3. 従業員の公平性と希望への配慮

  • 特定の従業員にばかり負担の大きいシフト(例:夜勤ばかり、休みが少ないなど)が偏らないように、公平なローテーションを心がけます。
  • 可能な限り、従業員から提出された希望休や勤務希望を反映させるように努めます。ただし、すべての希望を叶えるのが難しい場合があることを従業員にも理解してもらう必要があります。
  • 希望が通らなかった場合の代替案や、今後のシフト作成に活かすためのコミュニケーションも重要です。

4. 連続勤務日数と休日の確保

  • 従業員の健康管理のため、過度な連続勤務とならないように注意します。特に夜勤明けの休日などは適切に設定します。
  • 法定休日以外に、従業員が心身を休めるための十分な休日を確保できるように配慮します。

5. スキルと経験のバランス

  • 各シフトに、必要なスキルや経験を持つ従業員を適切に配置します。初心者ばかりのシフトや、特定の業務ができる人がいない時間帯ができないように調整します。
  • 教育やOJTの機会も考慮し、経験の浅い従業員をサポートできる人員を配置することも重要です。

6. コミュニケーションと透明性

  • 勤務表作成のルールやプロセスについて、従業員に明確に伝えます。
  • 希望休の申請方法や期限、シフト確定後の変更手続きなどを周知します。
  • 作成された勤務表は、従業員がいつでも確認できる場所に掲示するか、システムで共有します。
  • 疑問点や不満が出た場合に、相談できる窓口や体制を整えておくことも大切です。

7. 不測の事態への対応準備

  • 急な体調不良や個人的な理由による欠勤が発生した場合に備え、代替要員の手配ルールを決めておいたり、協力体制を構築しておいたりします。

これらのポイントをバランス良く満たすことが、質の高い勤務表を作成し、従業員の満足度を高めることにつながります。

作成後の運用と効率化

勤務表は作成して終わりではありません。確定後の運用と、次回の作成に向けた効率化の取り組みも重要です。

1. 勤務表の共有と周知

  • 作成した勤務表は、速やかに全従業員に共有します。掲示板への貼り出し、メールでの一斉送信、グループウェアや専用システムでの公開など、職場環境に合った方法を選びます。
  • 特に確定日や公開日を決めておくと、従業員も自身のスケジュールを立てやすくなります。

2. 変更希望やトラブルへの対応

  • シフト確定後に変更希望が出た場合のルール(例:〇日前まで、代わりを見つけることなど)を明確にしておきます。
  • 急な欠勤などが発生した場合は、事前に決めておいた代替要員の手配ルールに基づき、迅速に対応します。
  • 変更が発生した場合は、関係者全員に速やかに通知します。

3. 実績との照合と評価

  • 作成した勤務表通りに勤務が行われたか、実際の勤怠実績と照合します。
  • 計画通りに人員配置できたか、逆に不足や過剰がなかったかなどを評価し、次回の勤務表作成に活かします。

4. 作成プロセスの改善と効率化

  • 勤務表作成にかかった時間や労力、発生したミスやトラブルなどを振り返ります。
  • 従業員から勤務表に関するフィードバックを収集し、改善点を探ります。
  • 手作業やエクセルでの作成に限界を感じている場合は、勤務表作成システムの導入を検討します。システムを活用することで、入力作業やチェック作業、集計作業などを大幅に効率化できます。
  • 定型的なシフトパターンがある場合は、テンプレート化することで入力を省力化できます。
  • 従業員に希望休を提出するフォーマットやルールを徹底してもらうだけでも、取りまとめの負担が軽減されます。

継続的に運用方法を見直し、効率化を図ることで、作成担当者の負担を減らし、より質の高い勤務表を迅速に作成できるようになります。特に人手不足が慢性化している職場では、効率的な勤務表作成は、限られた人員を最大限に活用するために不可欠な要素となります。


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