北海道最低賃金とは何か?

北海道最低賃金(ほっかいどうさいていちんぎん)とは、北海道内で働くすべての労働者に支払われるべき、時間当たりの賃金の最低額を法律で定めたものです。これは日本の「最低賃金法」に基づいて、地域ごとに定められる「地域別最低賃金」の一つです。産業や職種に関わらず、原則として北海道内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。正社員、パートタイマー、アルバイト、派遣社員など、雇用形態に関わらず適用される点が重要です。

北海道最低賃金はいくらか?(現在の金額)

北海道の地域別最低賃金は、厚生労働省により毎年改定されています。現在の北海道最低賃金は、1時間あたり960円です。(令和5年10月1日発効)

この金額は、北海道内で労働者を使用するすべての使用者が遵守しなければならない最低ラインの賃金です。この金額未満の賃金で労働者を使用することは法律違反となります。

なぜ最低賃金があるのか?

最低賃金制度は、労働者の生活の安定と向上を図り、労働力の質的向上をめざすとともに、事業の公正な競争を確保することを目的としています。具体的には:

  • 労働者、特に賃金が低い労働者の生活を保障し、健康で文化的な最低限度の生活を営めるようにするため。
  • 使用者間の不当な安値競争を防ぎ、公正な市場競争を促進するため。
  • 経済全体の活性化にも寄与する可能性が期待されるため。

といった理由から、国が定めた最低賃金法に基づき、地域の実情に合わせて毎年見直しが行われています。

どこに適用されるのか?(適用範囲)

北海道最低賃金は、名称の通り、北海道のすべての地域に適用されます。札幌市、函館市、旭川市、釧路市などの主要都市はもちろん、道内のすべての市町村が含まれます。地理的な場所による例外はありません。

また、適用される労働者についても、原則として以下のように非常に広範囲です。

  • フルタイムの正社員
  • パートタイマー、アルバイト
  • 契約社員、嘱託社員
  • 派遣社員(派遣先の地域最低賃金または特定最低賃金が適用されます)
  • 臨時、日雇いの労働者

ただし、例外的に適用されない労働者や、特定の産業にのみ適用される別の最低賃金(特定最低賃金)が存在する場合もあります。

特定最低賃金について

北海道には、地域別最低賃金(960円)とは別に、特定の産業に従事する労働者を対象とした「特定最低賃金」がいくつか定められています。例えば、特定の製造業などが対象となることがあります。

もし、ある労働者が従事する産業に特定最低賃金が定められており、その特定最低賃金の金額が地域別最低賃金(960円)よりも高い場合は、特定最低賃金の方が優先して適用されます。
特定最低賃金の金額が地域別最低賃金以下の場合は、地域別最低賃金(960円)が適用されます。

自分が働く産業に特定最低賃金が適用されるかどうか、その金額はいくらかは、北海道労働局のウェブサイトなどで確認できます。

最低賃金はどのように決定されるのか?

北海道の地域別最低賃金は、厚生労働大臣から諮問を受けた中央最低賃金審議会での答申を参考にしつつ、北海道労働局長の諮問機関である北海道地方最低賃金審議会での審議を経て決定されます。

この審議会は、公益代表、労働者代表、使用者代表の同数の委員で構成されており、以下の要素などを考慮して審議を行います。

  • 労働者の生計費(物価、家計の状況など)
  • 労働者の賃金(北海道内の一般的な労働者の賃金水準など)
  • 通常の事業の賃金支払い能力(企業の経営状況、経済情勢など)

これらの要素を総合的に勘案し、公益代表が提示する目安額なども参考にしながら、最終的な改定額が答申され、それが北海道労働局長によって決定・公示されます。通常、このプロセスは毎年夏から秋にかけて行われ、新たな最低賃金は秋頃に発効します。

賃金はどのように支払われ、どのように確認すれば良いのか?

支払いについて

使用者は、労働者に対し、実際に労働した時間に応じた賃金が最低賃金額以上となるように支払わなければなりません。時間給の場合は分かりやすいですが、月給や日給、出来高払制などの場合は、それぞれの賃金を時間あたりの金額に換算して比較する必要があります。

時間あたりの金額に換算する際の計算方法:

  • 月給の場合: 月給額 ÷ 1ヶ月の所定労働時間数
  • 日給の場合: 日給額 ÷ 1日の所定労働時間数
  • 出来高払制などの場合: 出来高払等によって計算された賃金の総額 ÷ その賃金算定期間における総労働時間数

ただし、以下の手当や賃金は、最低賃金の計算に含めないことになっています。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)
  • 精皆勤手当
  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 時間外労働、休日労働、深夜労働に対して支払われる割増賃金

つまり、「基本給」や通常の「職務手当」などが計算の対象となることが一般的です。

確認と対応について

労働者は、自分の受け取る賃金が最低賃金額以上になっているかを自分で確認することができます。給与明細などで基本給やその他の手当、労働時間を確認し、上記の計算方法で時間あたりの賃金を計算してみましょう。

もし、受け取っている賃金が最低賃金額よりも低い場合は、法律違反の可能性があります。まずは使用者(会社の担当者や上司など)に相談し、説明を求めるのが第一歩です。それでも改善されない場合や相談しにくい場合は、外部の機関に相談することができます。

相談先

北海道労働局や、その管轄の労働基準監督署では、最低賃金に関する相談を受け付けています。賃金が最低賃金額を下回っている疑いがある場合や、最低賃金制度について詳しく知りたい場合は、これらの機関に問い合わせることができます。匿名での相談も可能です。

また、労働組合に加入している場合は、組合に相談することも有効な手段です。

使用者側の義務

使用者は、最低賃金法に基づき、労働者に最低賃金以上の賃金を支払う義務があります。また、最低賃金に関する事項(適用される最低賃金額、効力発生年月日など)を、常時作業場の見やすい場所に掲示するなどして、労働者に周知する義務もあります。これを怠ると罰則の対象となることがあります。

まとめ

北海道最低賃金は、北海道内で働く多くの労働者に適用される重要なルールです。現在の金額は1時間あたり960円(令和5年10月1日発効)であり、特定の産業によってはこれより高い特定最低賃金が適用される場合もあります。この金額は毎年見直されますので、最新の情報を確認することが大切です。労働者も使用者も、最低賃金制度を正しく理解し、遵守することが、適切な労働環境の維持につながります。

By admin