【大相撲協会】とは何か? 公益財団法人としての役割
大相撲協会(正式名称:公益財団法人 日本相撲協会)は、日本の国技である大相撲を統括し、運営する唯一の法人です。
単なるスポーツ団体ではなく、相撲の伝統文化を保存・継承し、健全な普及発展を図ることを目的とした公益財団法人として、内閣総理大臣の認可を受けて活動しています。
協会の主な役割は、プロフェッショナルな大相撲の興行(本場所の開催)、力士・年寄・行司・呼出・床山といった相撲界に関わる全ての人材の管理と育成、そして相撲の規則や慣習の維持・発展です。
大相撲協会はなぜ公益財団法人なのか?
大相撲協会が公益財団法人という形態をとっているのは、相撲が単なる興行や競技にとどまらず、日本の歴史や文化に深く根ざした「国技」として位置づけられているからです。
公益財団法人となることで、その活動が特定の利益のためではなく、公共の利益(この場合は相撲文化の保存・振興、国民文化の向上)に資することが法的に認められます。
これにより、税制上の優遇措置を受けられる一方、事業運営の透明性が求められ、主務官庁(現在は内閣府)の監督下に置かれます。
相撲の伝統継承や人材育成など、営利だけでは成り立ちにくい活動を持続的に行うための基盤となっています。
大相撲協会の本拠地はどこにあるのか?
大相撲協会の本部事務所は、東京都墨田区横網にある両国国技館の敷地内に位置しています。
両国国技館は、1月場所、5月場所、9月場所と、年6回の本場所のうち3場所が開催される大相撲の中心地であり、協会にとって活動の要となる場所です。
協会の意思決定機関である理事会や、各種委員会の多くがこの本部で開かれています。
相撲博物館もこの国技館内に併設されており、相撲の歴史や文化に関する資料を展示・公開しています。
大相撲協会にはどれくらいの人が関わっているのか?
大相撲協会に直接的・間接的に関わるプロフェッショナルな人材は多岐にわたります。具体的な人数は変動しますが、概ね以下の通りです。
- 力士(りきし):大相撲の主役であり、協会の管理下で活動します。幕内、十両、幕下、三段目、序二段、序ノ口の各階級を合わせて、常時600~700人程度が登録されています。
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年寄(としより):協会の構成員であり、主に引退した元力士が襲名する名跡です。親方とも呼ばれ、相撲部屋の師匠や協会の運営に携わります。
名跡(年寄株)の数は限られており、現在105の正規の名跡があります。これに加えて、一代年寄や準年寄といった一時的な資格を持つ者もいます。 - 行司(ぎょうじ):取組の審判を務めます。木村家、式守家の二家があり、階級に応じて装束などが異なります。約40~50人程度が在籍しています。
- 呼出(よびだし):力士の呼び上げ、土俵の設営・管理、太鼓打ちなどを担当します。行司と同様に階級があります。約40~50人程度が在籍しています。
- 床山(とこやま):力士の髷(まげ)を結います。力士の階級に応じて担当する床山の階級も異なります。約50~60人程度が在籍しています。
- その他、協会の事務職員や、維持員といった協会を支援する人々もいます。
これらの人々全てが、大相撲協会の運営するプロ相撲システムの中で、それぞれの役割を果たしています。
大相撲協会はどのように運営されているのか? 組織構造と意思決定
大相撲協会の最高意思決定機関は理事会です。理事は協会の構成員である年寄の中から選出され、理事長(協会の代表者)も理事の互選によって選ばれます。
理事会の下には、審判部、事業部、広報部、巡業部、指導部など、様々な業務を分担する部署や委員会が置かれており、それぞれの担当理事や委員が実務を執行・検討します。
重要な事項(本場所の開催、番付編成、規約改正、不祥事への対応など)は理事会で審議・決定されます。特に、力士の昇進・降下や休場力士の番付への影響などを決定する番付編成会議は、各場所後に開かれる重要な会議です。
大相撲協会の運営は、公益財団法人としての定められた規則と、相撲界に古くから伝わる伝統や慣習に基づいて行われています。
日々の運営は、各部署に配属された年寄や事務職員が担当しています。
また、全国に散らばる相撲部屋(後述)も、協会の管理・監督のもとで運営されており、部屋の師匠である年寄が協会の各種会議に出席し、意見を述べることがあります。
大相撲協会はどのようにして番付を編成するのか?
大相撲の番付は、各場所後の協会の最も重要な業務の一つです。
番付編成は、協会の番付編成会議によって行われます。この会議は、理事長をはじめとする協会の幹部(主に理事や役員待遇委員など経験豊富な年寄)で構成されます。
編成の基本的な基準は、直前の本場所での力士の成績(勝ち星と負け星)です。
- 勝ち越し(勝ち星が負け星より多い)た力士は原則として昇進します。
- 負け越し(負け星が勝ち星より多い)た力士は原則として降下します。
- 休場した力士は、通常、番付が下がります。
しかし、単に成績だけではなく、対戦相手のレベル、相撲内容、怪我からの復帰、他の力士の成績など、様々な要素が総合的に考慮されます。
特に三役(関脇・小結)以上の地位や、十両・幕下間の昇降、幕内・十両間の昇降といった節目の階級では、会議での議論が慎重に行われます。
編成された番付は、場所のおよそ2週間前に発表されます。これは単なる順位表ではなく、紙面に書かれる文字の大きさなどにも厳格な決まりがある、伝統的な芸術作品でもあります。
大相撲協会の構成員である「年寄(親方)」になるには?
大相撲協会の運営に携わる「年寄」となるには、いくつかの厳しい条件とプロセスが必要です。
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元力士であること:原則として、大相撲で一定以上の地位に達した元力士である必要があります。
具体的には、現役生活中に幕内を通算20場所以上務めるか、関脇以上の地位を3場所以上務めるか、横綱または大関を通算25場所以上務めるかのいずれかの実績が求められます。(これは年寄名跡を襲名する際の一般的な目安であり、特例もあります。) -
年寄名跡(年寄株)を取得すること:これが最も困難な条件の一つです。
年寄名跡は協会の「所有」であり、その数は105と定められています。現役の年寄が引退したり亡くなったりした場合に「空き」が出ますが、基本的には先代から譲り受けるか、他の年寄やその遺族から「株」を買い取る必要があります。
年寄株は非常に高額で取引されることが知られており、経済的な準備も必要となります。 - 協会の承認を得ること:年寄名跡を取得しても、最終的には大相撲協会の理事会の承認がなければ、年寄として認められません。現役時代の成績、相撲に対する貢献度、人格などが考慮されます。
- 年齢制限:年寄として活動できるのは、原則として65歳までです。名跡を襲名する際にも年齢上限があります。
- その他:日本国籍を有していることも必須条件です。また、師範となるための研修や試験なども課される場合があります。
これらの条件を満たした者が、晴れて協会の構成員である年寄となり、相撲部屋の師匠や協会の役員・委員として大相撲の運営に携わることになります。
なお、横綱として特に功績顕著な力士には、引退後も一代限りで年寄名跡を借りる「一代年寄」や、正規の年寄株取得までの一時的な「準年寄」といった制度もあります。
大相撲協会はどのように相撲部屋(Heya)を管理・監督しているのか?
相撲部屋は、力士が共同生活を送り、稽古に励む大相撲の基盤となる場所です。各部屋は協会の年寄である「師匠(親方)」によって運営されています。
大相撲協会は、これらの相撲部屋全体を統括・監督する責任を負っています。
協会の部屋管理・監督の主な側面:
- 部屋の設立・運営承認:新しい部屋を設立するには、協会の理事会の承認が必要です。師匠となる年寄の資格や資質、部屋の設備などが審査されます。
- 規則・ガイドラインの設定:協会は、部屋の生活、稽古、規律に関する基本的な規則やガイドラインを定めています。師匠はこれらを遵守し、部屋の力士に徹底させる義務があります。
- 指導・助言:協会の指導部や巡業部などの部署は、各部屋の稽古状況や運営状況について指導・助言を行います。合同稽古なども協会が主導して行うことがあります。
- 力士の管理:協会は、各部屋に所属する全ての力士を登録・管理しています。力士の入門、休場、引退などは全て協会に届け出られ、承認が必要です。
- 不祥事への対応:部屋内で不祥事が発生した場合、協会が調査を行い、師匠や力士に対して懲戒処分を科すことがあります。師匠には所属力士の行動に対する監督責任が強く求められます。
このように、相撲部屋は独立して運営されているように見えますが、その実態は全て大相撲協会の厳格な管理・監督下に置かれています。
師匠である年寄は協会の構成員であるため、部屋の運営を通じて協会の意向を反映させ、相撲界全体の秩序と伝統を守る役割を担っています。
大相撲協会はどのように収益を得ているのか? 資金源
大相撲協会の運営には多額の費用がかかります。その主な収益源は以下の通りです。
- 本場所の入場券収入:年6回の本場所におけるチケット販売は、協会の最も大きな収入源の一つです。両国国技館をはじめとする各会場の観客動員数が収益に直結します。
- 放映権料:NHKなどの放送局からの本場所のテレビ・ラジオ中継や、近年ではインターネット配信などの放映権料も重要な収入源です。
- 巡業収入:本場所の間に行われる地方巡業の収益も協会の収入となります。
- 広告収入・スポンサー収入:土俵周りの懸賞幕や、本場所会場での広告掲示、協会の行うイベントなどにおけるスポンサーシップによる収入です。
- グッズ販売収入:国技館やお土産店、オンラインショップなどでの相撲関連グッズの販売収益です。
- 寄付金・補助金:公益財団法人として、個人や法人からの寄付金を受け入れたり、相撲文化振興に関わる補助金を受けたりすることがあります。
- 維持員会費:協会を支援する維持員制度からの収入です。
これらの収益を基に、協会は力士や関係者の給与・手当の支払い、施設の維持管理、巡業の実施、文化振興事業、そして組織運営に必要なあらゆる費用を賄っています。
公益財団法人であるため、得られた収益は相撲事業の継続と発展、そして公益目的の達成のために使われます。
大相撲協会は不祥事や規律違反にどう対処するのか?
大相撲協会は、規約や規則に違反したり、相撲界の品位を損なう行為があったりした場合、厳格な規律委員会や理事会の審議を経て、関係者に対して処分を科します。
処分は、事案の軽重に応じて様々な種類があります。
主な懲戒処分の種類:
- 譴責(けんせき):口頭または文書による注意・警告です。
- 戒告(かいこく):より重い注意・警告で、将来への反省を求められます。
- 罰金:金銭的な制裁です。
- 出場停止(しゅつじょうていし):本場所や巡業への出場を一定期間禁止します。
- 降格(こうかく):番付や協会の役職を引き下げます。年寄の場合、役員からの降格などがあります。
- 報酬減額(ほうしゅうげんがく):給与や手当を一定期間減らします。
- 引退勧告(いんたいかんこく):力士に対して、事実上の強制力を持つ引退の勧告です。これに従わない場合は解雇処分となります。
- 解雇(かいこ):相撲界からの追放処分です。力士、年寄、その他関係者にも適用される最も重い処分です。
これらの処分は、まず協会の調査委員会などが事実関係を調査し、規律委員会などで処分案が検討され、最終的に理事会の決定を経て執行されます。
特に八百長問題や暴力問題、違法薬物使用などの重大な事案に対しては、厳しい姿勢で臨むことを原則としています。
大相撲協会は、相撲の伝統と品格を守るため、所属する全ての人員に対して高い倫理観と規律を求めており、その維持のために懲戒権を行使しています。
年間でどれくらいの本場所を大相撲協会は開催しているのか?
大相撲協会は、1年間に6回の公式な本場所(ほんばしょ)を開催しています。
これを「六場所制(ろくばしょせい)」と呼びます。
各本場所は15日間行われ、全ての力士にとって成績が番付に反映される最も重要な機会です。
六場所の開催時期と場所:
- 一月場所(初場所):毎年1月、東京都墨田区の両国国技館で開催されます。
- 三月場所(春場所):毎年3月、大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)で開催されます。
- 五月場所(夏場所):毎年5月、東京都墨田区の両国国技館で開催されます。
- 七月場所(名古屋場所):毎年7月、愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)で開催されます。
- 九月場所(秋場所):毎年9月、東京都墨田区の両国国技館で開催されます。
- 十一月場所(九州場所):毎年11月、福岡国際センターで開催されます。
この六場所制は、戦後、プロスポーツとしての相撲を発展させる中で確立されました。
六場所以外にも、協会は地方巡業やトーナメントなどを主催・共催することがありますが、これらは番付に直接影響しない「本場所外」の興行と位置づけられています。
まとめ
公益財団法人大相撲協会は、日本の国技である大相撲を維持・運営・発展させるための多岐にわたる役割を担っています。
その組織構造、人員構成、運営方法、資金調達、そして規律維持の仕組みは、全て相撲の伝統を守りつつ、現代社会においてプロフェッショナルな興行として成立させるために構築されています。
単に興行を行うだけでなく、文化の継承者としての側面も強く持ち合わせている点が、大相撲協会の大きな特徴と言えるでしょう。