相談支援員という仕事に興味をお持ちでしょうか? あるいは、ご自身やご家族が相談支援員の支援を必要としているかもしれません。ここでは、相談支援員がどのような仕事なのか、なぜ必要なのか、どこで働いているのか、そしてどうすればなれるのかといった具体的な疑問について、詳しく解説していきます。
【相談支援員とは】その役割と対象者
相談支援員は、主に障害のある方や、障害のあるお子さん、そしてそのご家族からの相談に応じ、必要な情報提供や助言を行い、様々な福祉サービスや地域の資源とつなぐ役割を担う専門職です。
どのような人が対象?
主に以下のような方が対象となります。
- 身体障害、知的障害、精神障害のある方
- 難病等の方
- 発達障害のあるお子さん
これらの障害や状況を持つ方だけでなく、そのご家族からの相談にも応じます。対象となる方は、障害者手帳をお持ちの方に限らず、医師の診断や市町村の判断により支援が必要と認められた方も含まれます。
なぜ相談支援員が必要?
現在の障害福祉サービスは非常に多様化しており、制度も複雑です。ご本人やご家族だけでは、どのようなサービスが利用できるのか、どのように手続きをすれば良いのか、数あるサービスの中からどれを選べば最適なのかを判断することは容易ではありません。
相談支援員は、福祉制度や利用できるサービスに関する専門知識を持ち、公平かつ中立的な立場から、ご本人の状況や希望を丁寧に聞き取り、その人らしい生活を送るために必要な支援は何かを一緒に考えます。いわば、障害福祉サービスを利用するための「道しるべ」のような存在であり、ご本人やご家族が自立した地域生活を送るために不可欠な役割を担っています。
【具体的な仕事内容】計画相談支援を中心に
相談支援員の中心的な業務は、「計画相談支援」と「障害児相談支援」と呼ばれるものです。これは、福祉サービスを利用するために必要な「サービス等利用計画」や「障害児支援利用計画」を作成する一連のプロセスを指します。
サービス等利用計画等を作成する流れ
具体的なステップは以下の通りです。
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インテーク(初回面接)
初めて相談に来られた方から、現在の困りごとや相談したいこと、これまでの経緯などを包括的に聞き取ります。相談支援の利用契約についても説明します。
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アセスメント
ご本人の生活状況、健康状態、家族関係、日中の活動、社会とのつながり、そして「どのような生活を送りたいか」といった希望や目標などを、より深く詳細に聞き取ります。必要に応じて、ご自宅を訪問したり、関係機関と連携したりしながら行います。
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サービス等利用計画案の作成
アセスメントで得られた情報に基づき、ご本人の意向を最大限に尊重しながら、課題解決や目標達成のためにどのようなサービスを、どのくらいの頻度で利用するのが適切かなどを具体的に盛り込んだ計画案を作成します。
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サービス担当者会議
作成した計画案を、ご本人、ご家族、そしてこれからサービスを提供する可能性のある事業所の担当者などが集まり検討します。様々な視点から意見を交わし、より良い計画になるよう調整を行います。
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サービス等利用計画の作成・提出
サービス担当者会議での合意内容を踏まえ、正式なサービス等利用計画を作成し、市町村に提出します。これにより、ご本人は計画に基づいたサービスを利用するための手続きを進めることができます。
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サービス利用開始後のモニタリング
計画に基づいてサービスが開始された後も、相談支援員の役割は終わりません。定期的にご本人と面談し、サービスの利用状況や効果、生活状況に変化がないかなどを確認します。計画が適切に実施されているか、ご本人の状況に合っているかをチェックする重要なプロセスです。
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計画の変更・更新
モニタリングの結果、ご本人の状況に変化があった場合や、計画通りに進んでいない場合は、必要に応じて計画の見直しや変更を行います。計画には有効期間があるため、定期的な更新手続きも行います。
これらの計画作成業務の他にも、相談支援員は以下のような業務を行います。
- 福祉制度や利用できるサービスに関する情報提供
- 地域の社会資源(医療機関、行政、各種団体など)に関する情報提供と連携
- 権利擁護に関する支援(虐待防止、成年後見制度の利用支援など)
- 地域での生活を継続するための様々な相談対応
- 困難事例に対する多機関連携での支援
相談支援員は、単にサービスを紹介するだけでなく、ご本人の人生に寄り添い、その人らしい豊かな暮らしを実現するために、様々な専門職や機関と連携しながら、継続的に支援を続ける伴走者と言えます。
【どこで働く?】活躍の場と支援を受ける場所
相談支援員が主に活躍する場所は、「相談支援事業所」と呼ばれる事業所です。
主な働く場所
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特定相談支援事業所・障害児相談支援事業所
障害者総合支援法や児童福祉法に基づき、計画相談支援や障害児相談支援を専門に行う事業所です。多くの相談支援員がここで働いています。社会福祉法人やNPO法人、株式会社などが運営しています。
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基幹相談支援センター
市町村が設置する、地域における相談支援の中核を担う機関です。専門性の高い相談支援や、地域の相談支援事業所のネットワーク構築、後方支援などを行います。ここに配置される相談支援員は、より専門的な知識や経験が求められることが多いです。
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市町村の障害福祉担当課
行政職員として相談支援業務の一部を担ったり、地域の相談支援体制の整備に関わったりする形で相談支援員(またはそれに準ずる職務)が配置されている場合があります。
これらの事業所や機関に所属し、事業所の事務所内で相談を受けたり、必要に応じてご本人宅や関係機関へ訪問したりしながら業務を行います。
どこで支援を受けられる?
相談支援員の支援を受けたい場合は、お住まいの市町村の障害福祉担当窓口に相談するか、お近くの「特定相談支援事業所」や「障害児相談支援事業所」に直接問い合わせてみましょう。事業所のリストは市町村のウェブサイトなどで公開されていることが多いです。
【どうすればなれる?】資格要件とキャリアパス
相談支援員になるためには、定められた実務経験と、「相談支援従事者研修」と呼ばれる研修を修了している必要があります。
必要な実務経験
相談支援専門員として働くためには、特定の分野での実務経験が必要です。必要な経験年数は、お持ちの資格によって異なります。
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特定の国家資格等(社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、看護師、PT, OT, STなど)をお持ちの場合
相談支援業務や直接支援業務(身体・知的・精神障害者、高齢者、児童等の支援)の実務経験3年以上
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上記以外の資格または無資格の場合
相談支援業務または直接支援業務の実務経験5年以上
※直接支援業務とは、例えば障害者施設や高齢者施設、児童施設などで介護や生活支援などに従事した経験などが該当します。
必要な実務経験の分野や年数については、詳細が定められていますので、ご自身の経歴が要件を満たすか、事前に確認することが重要です。
相談支援従事者研修
実務経験要件を満たした上で、都道府県や指定された機関が実施する「相談支援従事者研修」を受講し、修了する必要があります。この研修は主に以下の2段階があります。
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相談支援従事者初任者研修
これから相談支援専門員として働くために最初に受講する研修です。相談支援に関する基本的な知識や技術、制度に関する内容を学びます。(講義と演習で構成されることが一般的です)
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相談支援従事者現任研修
相談支援専門員として一定期間(概ね5年ごと)の実務経験を積んだ方が、知識や技術をアップデートし、資質を向上させるために受講する研修です。より実践的、専門的な内容を学びます。
この研修を修了することが、相談支援員として認められるための重要なステップとなります。
相談支援員としての登録
研修を修了しただけでは、すぐに「相談支援専門員」として活動できるわけではありません。相談支援専門員として働くためには、あなたが勤務する予定の事業所が、都道府県または市町村から「特定相談支援事業所」または「障害児相談支援事業所」としての指定を受けている必要があります。そして、その事業所に相談支援専門員として配置されることで、正式に業務を行うことができます。
【どのように支援を進める?】プロセスと連携
相談支援員は、計画作成だけでなく、様々な場面でご本人や関係者と関わりながら支援を進めます。
支援の進め方で大切なこと
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利用者主体・本人中心の姿勢
ご本人の意思や希望を最も尊重し、どのような生活を送りたいか、そのために何が必要かをご本人と一緒に考えます。決して支援者が一方的に決めることはありません。
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丁寧なコミュニケーション
信頼関係を築くため、またご本人の真のニーズを引き出すために、傾聴の姿勢でじっくりと話を伺うことが不可欠です。ご本人やご家族が安心して話せる雰囲気づくりを心がけます。
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多職種・多機関との連携
福祉サービス事業所、医療機関、教育機関、行政、地域のボランティア団体など、様々な専門職や機関と連携し、情報を共有し、協力して支援を行います。一人の相談支援員だけで全てを解決することはできません。
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地域資源の活用
利用できる福祉サービスだけでなく、地域の様々な社会資源(地域の交流の場、インフォーマルな支援など)も活用し、ご本人が地域で孤立しないよう支援します。
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権利擁護
ご本人の権利が守られるよう、必要な場合は代弁したり、制度利用を支援したりします。
困難なケースに直面することもあります。例えば、ご本人の希望と現実的に利用できるサービスに隔たりがある場合、複数の事業所間の連携がうまくいかない場合、ご家族との意見の調整が必要な場合などです。そのような時こそ、相談支援員は粘り強く関係者と話し合い、ご本人の最善の利益を追求するための調整役として力を発揮することが求められます。
【給与の目安】年収や待遇について
相談支援員の給与は、勤務する事業所の種類(法人格、規模)、地域、ご自身の経験年数や資格、役職などによって幅があります。
一般的な給与水準
あくまで目安ですが、常勤の相談支援員の場合、月給で25万円~35万円程度、年収では300万円~450万円程度となることが多いようです。
給与に影響する要因
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経験年数・スキル
経験が豊富で、多様なケースに対応できる相談支援員は評価が高くなる傾向があります。
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保有資格
社会福祉士や精神保健福祉士といった国家資格を持っている場合、基本給が高めに設定されたり、資格手当が支給されたりすることがあります。
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勤務先の種類・規模
法人によって給与規程が異なります。大きな法人や公的な事業所の方が、安定した給与体系である場合もあります。
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地域
都市部と地方では、物価や求人状況の違いから給与水準が異なることがあります。
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役職
相談支援専門員として経験を積み、チームリーダーや管理者といった役職に就くと、役職手当などが加算され給与が上がります。
基本給に加えて、交通費、住宅手当、扶養手当などの各種手当や、年1~2回の賞与(ボーナス)が支給される事業所もあります。求人情報を確認する際は、基本給だけでなく、賞与や手当を含めた年収目安や福利厚生についても確認することが大切です。
相談支援員の仕事は、直接的な対人支援であり、責任も大きいですが、その分、ご本人の生活がより良い方向に変化していく過程に立ち会い、貢献できるという大きなやりがいを感じられる仕事です。給与だけでなく、仕事の意義や自身のキャリアパスも考慮して検討する価値のある専門職と言えるでしょう。