個人が1年間に得た所得にかかる税金(所得税)を計算し、国に納める手続きを確定申告といいます。この確定申告には、定められた「期日」、つまり提出期限が存在します。確定申告期日は、納税義務者にとって非常に重要な日付であり、これを守るかどうかで手続きの煩雑さや、場合によっては金銭的な負担が大きく変わってきます。

ここでは、確定申告期日とは具体的にいつのことなのか、なぜ期限を守る必要があるのか、そしてもし期限に間に合わない場合はどうすればよいのかについて、具体的な手続き方法や注意点を含めて詳しく解説します。

確定申告期日とは?基本的なルールと例外

確定申告の標準的な提出期限はいつですか?

所得税の確定申告の提出期限は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。この期間内に、前年1月1日から12月31日までの1年間の所得を計算し、税額を確定させて税務署に申告書を提出する必要があります。

ただし、この期間の最終日である3月15日が土曜日、日曜日、または祝日にあたる場合は、翌開庁日が期限となります。多くの年では3月15日が期日ですが、年によっては16日や17日になることもあります。

所得税以外の申告期限も同じですか?

いいえ、確定申告と一言で言っても、所得税の他に贈与税や消費税など、様々な税目があります。これらの申告期限は、所得税とは異なります。

  • 贈与税の申告期限:原則として、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。所得税と同じ最終日ですが、受付開始日が異なります。
  • 消費税の申告期限(個人事業者):原則として、課税期間の末日の翌年3月31日までです。所得税より約2週間後に設定されています。こちらも3月31日が土日祝日の場合は、翌開庁日が期限となります。

本記事で「確定申告期日」と呼ぶ場合、特に断りがない限りは「所得税の確定申告の提出期限」を指します。

過去に確定申告期日が変更されたことはありますか?

はい、特別な事情が発生した場合には、国税庁の判断で全国一律に確定申告期日が延長されることがあります。最も近年の例としては、新型コロナウイルス感染症の影響により、複数年にわたって所得税などの確定申告期限が延長されたことが挙げられます。

また、大規模な自然災害が発生した地域においては、個別に申告期限が延長される「災害による申告、納付等の期限延長」という措置が講じられることがあります。これは特定の地域に限定される場合が多いです。

これらの特別な延長措置は、その都度、国税庁のウェブサイトや税務署から発表されます。自身が対象となるか確認が必要です。

なぜ確定申告期日を守る必要があるのか?

期限内に申告するメリットは何ですか?

期限内に確定申告を済ませる最大のメリットは、ペナルティを回避できることです。また、税金を納めすぎている(源泉徴収などで多く引かれている)ことにより還付金を受け取れる場合は、期限内に申告することで比較的早く還付金を受け取れる可能性が高まります。

精神的な負担も軽減されます。税務手続きを後回しにせず、決められた期間内に完了させることで、余計な心配を抱えずに済みます。

確定申告期日を過ぎてしまうとどうなりますか?ペナルティは?

確定申告期日を過ぎて申告することを「期限後申告」といいます。期限後申告を行った場合、本来納めるべき税額に加えて、原則として以下のペナルティ(加算税や延滞税)が課される可能性があります。

無申告加算税(むしんこくかさんぜい)

本来、申告する義務があるにもかかわらず、期限内に申告しなかった場合に課される税金です。納付すべき税額に対して、原則として税務署の調査通知を受ける前に自主的に期限後申告した場合は5%の割合が課されます。しかし、税務署の調査を受けてから申告したり、期限後申告でも納付すべき税額がある場合には、税務署からの決定通知により、納付すべき税額に対して15%(50万円を超える部分は20%)の割合が課されるのが原則です。

ただし、期限後申告であっても、以下の要件を全て満たす場合は無申告加算税が課されない特例があります。

  • その期限後申告が、法定申告期限から1ヶ月以内に自主的に行われていること。
  • 納付すべき税額の全額を法定納期限(または期限後申告書提出日)までに納付していること。
  • 過去5年間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合(例えば、申告するのをうっかり忘れていたような場合)であること。

つまり、うっかり忘れてしまっても、すぐに気づいて1ヶ月以内に自主的に申告・納税すれば、無申告加算税はかからない可能性が高いです。

過少申告加算税(かしょうしんこくかさんぜい)

期限内に申告書を提出したものの、その申告額が本来納めるべき税額よりも少なかった場合に課される税金です。税務署の調査により修正申告を行った場合に課されます。修正申告で新たに納めることになった税額に対して、原則として10%の割合が課されます。ただし、当初の申告額と50万円とのいずれか多い金額を超える部分は15%となります。

なお、税務署の調査を受ける前に、誤りに気づいて自主的に修正申告を行った場合には、過少申告加算税はかかりません。

確定申告期日を過ぎること自体に直接かかるペナルティではありませんが、期限後申告は内容に誤りがある可能性も高まるため、関連するリスクとして挙げられます。

延滞税(えんたいぜい)

納付すべき税額を、法定納期限(所得税の場合は原則3月15日)までに納付しなかった場合に課される税金です。税金を納付期限までに納めなかったことに対する利息のような性質を持ちます。

延滞税の金額は、納付すべき税額と、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて計算されます。延滞税の割合は期間によって異なり、法定納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは「延滞税特例基準割合+1%」の割合(令和6年1月1日以降は年2.4%)で、2ヶ月を経過した日以後は「延滞税特例基準割合+7.3%」の割合(令和6年1月1日以降は年8.7%)となります。この割合は変動することがあります。

重要な注意点:確定申告期日である3月15日は「申告期限」と「納付期限」の両方を兼ねています。期限後申告をした場合、申告が遅れたことによる無申告加算税に加えて、納付も遅れることがほとんどであるため、延滞税も必ず課されます。

確定申告期日までに完了させるための手続き

確定申告書はどのように作成すれば良いですか?

確定申告書を作成する方法はいくつかあります。

  • 国税庁のウェブサイト「確定申告書等作成コーナー」を利用する:最も推奨される方法です。画面の案内に従って必要事項を入力すれば、税額が自動で計算され、申告書様式に印刷したり、e-Taxで送信したりすることができます。マイナンバーカードやICカードリーダーがあれば自宅からオンラインで提出可能です。
  • 税務署で相談しながら作成する:確定申告期日前は税務署に相談会場が設けられます。予約が必要な場合が多いですが、職員のサポートを受けながら作成できます。
  • 税理士に依頼する:複雑な申告内容の場合や、忙しくて自分で作成する時間がない場合は、税理士に依頼することができます。費用はかかりますが、正確な申告をしてもらえます。
  • 市販の会計ソフトや申告ソフトを利用する:これらのソフトを利用して自分で作成することも可能です。

作成した申告書はどこに、どのように提出すれば期日に間に合いますか?

提出先は、原則として納税地を管轄する税務署です。納税地は一般的に住所地となります。提出方法は主に以下の3つです。

e-Tax(電子申告)による提出

国税庁のe-Taxシステムを利用してインターネット経由で提出する方法です。

【期日に間に合わせるには】確定申告期間最終日の23時59分までに送信を完了させる必要があります。自宅や税理士事務所など、インターネット環境があればどこからでも提出できます。

郵送による提出

作成した申告書を、管轄の税務署に郵送する方法です。

【期日に間に合わせるには】通信日付印(消印)が提出期限内であれば、提出期限内に提出されたものとみなされます。つまり、3月15日(または延長された期日)の消印が押されていればOKです。郵便局の窓口で「通信日付印を押してください」とお願いすると確実です。ポスト投函の場合、集荷時間によっては消印が翌日以降になるリスクがありますので注意が必要です。

税務署の窓口への提出

管轄の税務署の受付窓口に直接提出する方法です。

【期日に間に合わせるには】税務署の閉庁時間外は受付できないため、開庁時間内に提出する必要があります。確定申告期日当日は窓口が大変混雑することが予想されます。

最も手軽で、締め切りギリギリまで対応しやすいのはe-Taxですが、事前に利用開始のための手続きが必要です。郵送の場合は、期日当日の消印有効であることを覚えておきましょう。

もし確定申告期日に間に合わない場合

申告期限の延長はできますか?

所得税の確定申告については、原則として個別の事情による提出期限の延長は認められていません。ただし、前述したような災害などにより、国税庁が地域や全国一律に期限を延長する措置を講じた場合は、その延長された期日までが提出期限となります。

個人の消費税の申告については、事前に「申告期限延長申請書」を提出し承認を受けることで、1年間の延長が可能です。しかし、これは消費税の話であり、所得税の申告には原則として適用されません。

期限後申告を行う場合の手順と注意点は?

もし確定申告期日までに申告できなかった場合は、できるだけ早く期限後申告を行ってください。早ければ早いほど、無申告加算税の割合が軽減される可能性があります(自主的な期限後申告の場合)。

【手順】

  1. 確定申告期日を過ぎてしまったこと自体を、特に税務署に連絡する必要はありません。
  2. 速やかに確定申告書を作成します。作成方法は期限内の申告と同じです。
  3. 完成した申告書を管轄の税務署に提出します(郵送または窓口)。e-Taxでの提出も可能です。
  4. 申告書を提出すると、後日、税務署から納付すべき税額(本税+無申告加算税+延滞税)が記載された納付書が送られてくるか、自分で計算して納付します。
  5. 送られてきた納付書またはご自身で計算した税額に基づき、速やかに税金を納付します。

【注意点】

  • 期限後申告の場合、税務署からの連絡や調査が入る可能性が高まります。
  • 無申告加算税や延滞税は、納付が遅れるほど金額が増加します。
  • 還付申告(税金が戻ってくる申告)の場合は、期限後申告によるペナルティは原則ありませんが、申告できる期間には制限があります(通常5年間)。

延滞税や加算税を少しでも減らす方法はありますか?

延滞税は、納付が遅れた日数に対してかかるため、本税を一日でも早く納付することが最も効果的な軽減方法です。期限後申告であっても、申告書の提出と同時に本税を納付すれば、延滞税の負担を最小限に抑えられます。

無申告加算税については、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をすることで、無申告加算税の割合が5%に軽減されます(税務署の決定を待つと原則15%~20%)。また、前述の「1ヶ月以内」の特例に該当すれば、無申告加算税自体がかかりません。

もし税金をすぐに全額納めるのが難しい場合は、所轄税務署に相談することで、一定の要件のもと「納税の猶予」が認められる可能性もあります。これは延滞税の一部が免除される制度ですが、無申告加算税は免除されません。

納税期日・還付金について

所得税の納付期限はいつですか?

所得税の納付期限も、原則として確定申告の提出期限と同じ3月15日です。申告書を提出しただけでは納税は完了していません。申告期限までに納税も完了させる必要があります。

どのような納税方法がありますか?

様々な納税方法があります。

  • 振替納税:事前に税務署に依頼しておくと、指定した預貯金口座から自動で税金が引き落とされる方法です。非常に便利ですが、手続きの都合上、振替日は申告期限よりも約1ヶ月後の日付に設定されます(令和6年分の振替日は5月上旬の予定)。振替納税を選択した場合、3月15日時点での納付は不要ですが、残高不足などで振替ができない場合は延滞税がかかるため注意が必要です。
  • e-Tax経由での電子納税:インターネットバンキングやダイレクト納付(e-Taxと連携した口座引き落とし)などがあります。
  • クレジットカード納付:「国税クレジットカードお支払サイト」を利用して納付できます。決済手数料がかかります。
  • コンビニ納付:税額が30万円以下の場合、コンビニエンスストアでバーコード付きの納付書を使って納付できます。
  • 金融機関または税務署の窓口:納付書を使って、銀行などの金融機関や税務署の窓口で現金で納付する方法です。

納付方法によって、実際の支払いが完了するタイミングが異なります。期限内に確実に納付が完了する方法を選びましょう。

還付金はいつ受け取れますか?

還付申告(税金が戻ってくる申告)を行った場合、申告書が提出されてから通常1ヶ月~1ヶ月半程度で指定した口座に還付金が振り込まれます。e-Taxで提出したり、還付金の振込先口座を正確に記載したりすることで、比較的スムーズに処理が進むことが多いです。

確定申告期日よりも早い時期(例えば1月や2月上旬)に申告書を提出した場合、期日後に提出するよりも早く還付金を受け取れる傾向にあります。

確定申告期日に関するよくある誤解

「還付申告の場合は期限に関係なくいつでもいい」というのは本当ですか?

一部正しく、一部誤りです。還付申告は、年が明けてから5年間行うことができます。つまり、令和5年分(令和6年に申告するもの)の還付申告は、令和6年1月1日から令和10年12月31日までの間であればいつでも提出可能です。提出期限が3月15日だからといって、その日を過ぎたら還付申告ができなくなるわけではありません。

しかし、「いつでもいい」というわけではなく、「5年間」という期間制限があります。また、早く申告すればそれだけ早く還付金を受け取れるため、権利を行使するためにも早めの申告が推奨されます。

また、納付が発生する申告と還付申告の両方がある場合(例えば、事業所得で納付、医療費控除で還付が発生し、結果として還付になるケースなど)、その全体が「確定申告」として扱われ、提出期限は3月15日となります。期限を過ぎると無申告加算税などのペナルティ対象となる可能性があるので注意が必要です。

年明けすぐに提出しても問題ないですか?

全く問題ありません。むしろ、確定申告期日直前は税務署や相談会場が大変混雑するため、早めに準備・提出する方がスムーズに手続きを終えられます。e-Taxや郵送であれば、自身の準備が整い次第、年明け(通常1月1日から受付開始)から提出できます。

まとめ

確定申告期日は、所得税については原則として毎年3月15日です。この期日までに申告書の提出と税金の納付の両方を完了させる必要があります。期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税といった金銭的なペナルティが課されるリスクが生じます。

申告書の作成は「確定申告書等作成コーナー」の利用が便利で、提出はe-Tax、郵送、窓口のいずれかの方法で行います。もし万が一、期日までに間に合わない場合は、できるだけ早く期限後申告を行うことが、ペナルティを最小限に抑えるための重要なポイントです。

確定申告期日を意識し、余裕をもって準備・手続きを進めることが、スムーズな納税・還付につながります。ご自身の状況を確認し、計画的に確定申告を完了させましょう。

確定申告期日

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