要介護認定とは?(「なに?」に答える)

要介護認定(かいごにんてい)とは、日本の公的な介護保険制度において、介護サービスをどの程度必要とする状態にあるかを、市区町村が客観的に判定するための仕組みです。この認定を受けることで、国の介護保険サービスを自己負担割合に応じて利用できるようになります。

具体的には、心身の状態(認知症の有無や身体能力)、介護の手間などを総合的に評価し、以下のいずれかの区分に判定されます。

  • 自立(非該当):介護保険によるサービスは必要ない状態。
  • 要支援1:日常生活の一部に支援が必要な状態。比較的軽度。
  • 要支援2:要支援1よりやや支援が必要な状態。将来的に要介護状態になる可能性が高い。
  • 要介護1:日常生活の一部に介助が必要な状態。排泄や入浴など一部に介助が必要な場合がある。
  • 要介護2:日常生活の多くの部分に介助が必要な状態。立ち上がりや歩行などに介助が必要な場合が多い。
  • 要介護3:日常生活のほぼ全体に介助が必要な状態。自力での生活が困難な場合が多い。
  • 要介護4:日常生活のほぼ全体に高度な介助が必要な状態。意思疎通が困難な場合もある。
  • 要介護5:日常生活のほぼ全てにわたって高度な介助が必要な状態。寝たきりに近い状態など。

この要介護(または要支援)の区分によって、利用できる介護サービスの種類や、介護保険から給付される支給限度額(利用できるサービスの量の上限)が変わってきます。

なぜ要介護認定が必要なの?(「なぜ?」に答える)

要介護認定は、日本の介護保険制度のサービスを利用するために必須のステップです。認定を受けていないと、原則として以下のような介護保険サービスを受けることができません。

  • 訪問介護(ホームヘルプ)
  • 訪問看護
  • デイサービス(通所介護)
  • デイケア(通所リハビリテーション)
  • ショートステイ(短期入所生活介護・療養介護)
  • 特別養護老人ホームなどの施設入所
  • 福祉用具のレンタルや購入費の助成
  • 住宅改修費の助成

つまり、住み慣れた自宅で生活を続けるために支援が必要になった場合や、施設への入所を検討する際に、介護保険の枠組みでサービスを利用し、経済的な負担を軽減するためには、必ずこの認定が必要になります。認定により、その人に本当に必要なサービスが、適切な量提供されるように調整されるのです。

誰が要介護認定の対象になるの?(「だれが?」に答える)

要介護認定の申請対象者は、以下の条件を満たす方です。

  • 65歳以上の方(第一号被保険者)
    原因を問わず、市区町村の窓口に申請することで認定を受けることができます。加齢に伴う心身の変化により、日常生活で支援や介護が必要になった場合が該当します。
  • 40歳から64歳までの方(第二号被保険者)
    特定の病気(特定疾病)が原因で介護や支援が必要になった場合に認定申請が可能です。特定疾病は以下の16種類が定められています。

    • がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
    • 関節リウマチ
    • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
    • 後縦靱帯骨化症
    • 骨折を伴う骨粗鬆症
    • 初老期における認知症
    • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病関連疾患
    • 脊髄小脳変性症
    • 脊柱管狭窄症
    • 早老症
    • 多系統萎縮症
    • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
    • 脳血管疾患
    • 閉塞性動脈硬化症
    • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
    • 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

これらの年齢・疾病の要件に加え、原則としてその市区町村に住民票があることが必要です。

要介護認定の申請はどこでするの?(「どこで?」に答える)

要介護認定の申請窓口は、お住まいの市区町村の介護保険課(名称は自治体によって異なる場合があります)です。

申請書は市区町村の窓口で受け取るか、自治体のウェブサイトからダウンロードできることが多いです。

申請の手続き自体を自分で行うのが難しい場合は、以下の場所に相談したり、申請を代行してもらったりすることも可能です。

  • 地域包括支援センター(65歳以上の方が対象の総合相談窓口)
  • 居宅介護支援事業者(ケアマネジャーが所属)
  • 介護保険施設
  • 民生委員

特に地域包括支援センターは、申請の相談から手続きのサポートまで行ってくれる頼りになる存在です。

要介護認定の申請に費用はかかるの?(「いくら?」に答える)

要介護認定の申請自体に費用はかかりません。無料です。

ただし、認定のために必要となる「主治医意見書」を作成してもらう際の医師への診断書料については、多くの自治体で介護保険者が負担するため、申請者の自己負担は発生しませんが、一部例外がある場合もありますので、事前に市区町村の窓口で確認すると安心です。

認定を受けた後に、実際に介護サービスを利用する際には、サービス費用のうち原則として1割(所得によっては2割または3割)を自己負担する必要があります。このサービス利用料は認定の申請費用とは全く異なります。

要介護認定はどのように行われるの?(「どうやって?」に答える)

要介護認定は、申請から結果通知まで概ね以下の流れで進みます。通常、申請から認定結果の通知までは30日以内に行われることとされていますが、状況によっては遅れることもあります。

  1. 申請

    お住まいの市区町村の介護保険課窓口に申請書を提出します。申請時には以下のものが必要となることが多いです。

    • 介護保険被保険者証(65歳以上の方)
    • 医療保険の被保険者証(40歳~64歳の方)
    • 申請者の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
    • 印鑑(認印で可、不要な自治体もあります)
    • 主治医の情報(病院名、医師名など)

    申請は本人、家族のほか、地域包括支援センター、居宅介護支援事業者、介護保険施設などに代行してもらうことも可能です。

  2. 市区町村による認定調査

    市区町村の職員または委託を受けたケアマネジャーなどが自宅などを訪問し、本人の心身の状態について聞き取り調査(認定調査)を行います。調査員は、本人の身体能力(起き上がり、歩行など)、生活機能(食事、排泄、入浴など)、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応能力など、定められた約74項目について聞き取りや直接観察を行います。家族からの情報も重要な判断材料となります。

    同時に、市区町村から申請書に記載された主治医に対して、本人の病状や意見を記した主治医意見書の作成を依頼します。

  3. 一次判定(コンピュータ判定)

    認定調査の結果と主治医意見書の一部項目に基づき、コンピュータによって全国共通の判定基準に沿って「要介護状態区分」が自動的に算出されます。これが一次判定の結果です。

  4. 二次判定(介護認定審査会での審査・判定)

    一次判定の結果、認定調査の特記事項(調査員が詳細を補足した記述)、主治医意見書の内容、訪問調査時の調査員のコメントなどを踏まえ、保健・医療・福祉の専門家(医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、介護福祉士、精神科医、主任介護支援専門員など)で構成される介護認定審査会が審査を行います。

    審査会では、一次判定の結果が適切か、本人の状態はどの区分に該当するかを総合的に判断し、最終的な要介護(要支援)度を決定します。必要に応じて、追加の資料提出を求められたり、主治医に確認が行われたりすることもあります。

  5. 認定結果の通知

    介護認定審査会で決定された認定結果が、申請者本人に通知されます。認定結果通知書には、認定された要介護(要支援)度、認定の有効期間、サービスの支給限度額などが記載されています。同時に、新しい介護保険被保険者証が交付され、そこに認定結果が印字されます。

認定結果が出たらどうすればいい?(「そのあとは?」に答える)

認定結果を受け取ったら、いよいよ介護保険サービスを利用するための準備が始まります。

  • 要支援1または要支援2と判定された場合
    お住まいの地域の地域包括支援センターが窓口となります。地域包括支援センターの職員(保健師や社会福祉士など)と相談し、介護予防サービス計画(ケアプラン)を作成します。この計画に基づき、介護予防のためのサービス(例:デイサービス、訪問型サービスなど)を利用開始します。
  • 要介護1~要介護5と判定された場合
    ご自身で居宅介護支援事業者を選び、そこに所属する介護支援専門員(ケアマネジャー)に連絡します。ケアマネジャーは、本人や家族の意向、心身の状態などを把握し、どのようなサービスを、どれくらいの頻度で利用するかを盛り込んだ居宅サービス計画(ケアプラン)を作成してくれます。ケアマネジャーは、サービス提供事業所との連絡調整なども行います。このケアプランに基づき、介護サービス(例:訪問介護、デイサービス、施設入所など)を利用開始します。ケアマネジャーの作成するケアプランの費用は、介護保険から全額給付されるため自己負担はありません。
  • 自立(非該当)と判定された場合
    介護保険サービスは利用できません。ただし、市区町村独自の介護予防・生活支援サービス事業などが利用できる場合がありますので、地域包括支援センターに相談してみると良いでしょう。

認定の有効期間と更新・区分変更は?(「いつまで?」「変更は?」に答える)

要介護認定には有効期間があります。

  • 新規申請の場合:原則として6ヶ月です(状態により3ヶ月~12ヶ月の範囲で設定されることもあります)。
  • 更新申請の場合:原則として12ヶ月または24ヶ月、または36ヶ月です(状態や過去の認定歴により設定されます)。

有効期間が終了する前に、引き続き介護保険サービスを利用したい場合は、必ず更新申請の手続きが必要です。有効期間満了日の概ね60日前から申請が可能です。通知が市区町村から届くことが多いですが、届かない場合や忘れてしまうと、期間満了後はサービスが利用できなくなる可能性があるため注意が必要です。

また、認定の有効期間中に本人の心身の状態が著しく変化し、現在の認定区分では適切なサービスが受けられなくなった(例えば、急に状態が悪化した、または回復した)場合には、有効期間中でも区分変更申請を行うことができます。これにより、改めて認定調査や審査が行われ、現在の状態に合った新しい要介護(要支援)度が決定されます。

認定結果に納得できない場合は?(「不満があるときは?」に答える)

通知された認定結果について不服がある場合は、都道府県に設置されている介護保険審査会に対して不服申し立て(審査請求)を行うことができます。これは、認定結果を知った日の翌日から原則として3ヶ月以内に行う必要があります。

不服申し立てを行う前に、まずは市区町村の介護保険課や地域包括支援センターに相談し、認定に至った経緯や理由について説明を受けることが推奨されます。それでも納得がいかない場合に不服申し立てを検討します。

また、認定調査の際に伝えきれなかった情報がある、主治医意見書の内容に誤解があるなど、何らかの理由で申請時の情報が不十分だったと考えられる場合は、上記「区分変更申請」を検討することも一つの方法です。

どこで相談できるの?(「どこに相談すれば?」に答える)

要介護認定や介護保険サービス全般に関する相談は、以下の窓口で受け付けています。

  • お住まいの市区町村の介護保険課:申請手続き、制度に関する一般的な質問
  • 地域包括支援センター:65歳以上の方の総合相談、介護予防に関する相談、ケアプラン作成支援(要支援の方)
  • 居宅介護支援事業者:ケアマネジャーによる相談、ケアプラン作成(要介護の方)
  • 介護保険施設の相談窓口:施設入所に関する相談

特に申請前や申請方法に迷う場合は、まずは地域包括支援センターまたは市区町村の介護保険課に連絡してみるのが良いでしょう。


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