障害者手帳とは? 基本を知る

障害者手帳は、日本において身体や精神、知的などに一定の永続的な障害があることを証明する公的な手帳です。この手帳を取得することで、様々な福祉サービスや支援措置、公共料金の割引などを受けることができます。
これは単なる身分証明ではなく、障害のある方が地域社会で自立し、社会参加を促進するための重要なツールとしての役割を果たしています。手帳は障害の種類や程度に応じて等級が定められており、受けられる支援の内容もそれに基づいて異なります。

障害者手帳の種類

障害者手帳には、大きく分けて以下の3種類があります。それぞれ対象となる障害や申請手続きが異なります。

  • 身体障害者手帳: 視覚、聴覚、平衡機能、音声・言語・そしゃく機能、肢体不自由、心臓機能、じん臓機能、呼吸器機能、ぼうこうまたは直腸機能、小腸機能、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能、肝臓機能などに永続的な障害がある方に交付されます。都道府県知事、政令指定都市市長、中核市市長が交付します。
  • 療育手帳: 知的障害のある方に交付されます。名称は自治体によって異なり、「愛の手帳」「みどりの手帳」などと呼ばれることもあります。取得には児童相談所や知的障害者更生相談所での判定が必要です。都道府県知事、政令指定都市市長などが交付します。
  • 精神障害者保健福祉手帳: 精神疾患(てんかん、発達障害、アルコール・薬物依存症なども含む)により、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方に交付されます。精神障害の状態に関する医師の診断書または精神障害を理由とする年金給付を受けていることを証明する書類に基づいて交付されます。都道府県知事、政令指定都市市長、中核市市長が交付します。

障害の等級について

障害者手帳には、障害の程度に応じて等級が定められています。
身体障害者手帳は1級から6級まで、精神障害者保健福祉手帳は1級から3級までがあります。療育手帳の等級区分は自治体によって異なりますが、「A」(重度)、「B」(中軽度)のように区分されるのが一般的です。
この等級は、受けられる福祉サービスの内容や割引率などに影響するため、非常に重要です。等級の判定は、医師の診断書の内容や、療育手帳の場合は判定機関での検査結果などに基づいて行われます。

なぜ障害者手帳を取得するのか? そのメリットを詳しく

障害者手帳を取得する最大の理由は、様々な行政サービスや民間サービスにおいて、障害に応じた支援や優遇措置を受けられるようになることです。手帳の種類や等級、自治体によって受けられるサービスは異なりますが、主なメリットとしては以下のようなものが挙げられます。

各種割引・優遇措置

  • 税金の控除・減免:
    • 所得税・住民税の障害者控除、特別障害者控除
    • 相続税、贈与税の控除
    • 自動車税、軽自動車税の減免(一定の要件を満たす場合)
  • 公共交通機関の運賃割引:
    • JR、私鉄、バス、地下鉄、タクシーなどの運賃割引。等級によっては本人だけでなく、介護者の運賃も割引の対象になります(例:身体障害者手帳・療育手帳1級・2級、精神障害者保健福祉手帳1級の場合、本人と介護者1名が5割引など、会社により規定が異なります)。
    • 有料道路の割引(事前登録が必要、要件あり)。
  • 公共施設・民間施設の利用料金割引:
    • 美術館、博物館、動物園、植物園、プール、体育館などの公共施設の入場料や使用料が無料または割引になる場合があります。
    • 映画館、遊園地、温泉施設など、手帳を提示することで割引を受けられる民間施設もあります。施設ごとに割引内容が異なります。
  • 携帯電話料金の割引:
    • 各携帯電話会社が、障害者手帳保持者向けの割引プランを提供しています。
  • 電気料金、水道料金の割引:
    • 一部の電力会社や水道事業者で、料金割引制度が設けられている場合があります(自治体による違いが大きい)。

福祉サービス・支援措置

  • 自立支援医療: 精神通院医療、更生医療、育成医療などの医療費助成制度。医療費の自己負担が軽減されます。(別途申請が必要な場合がありますが、手帳があることで利用できるサービスです。)
  • 補装具費・日常生活用具費の支給・貸与: 義肢、装具、車椅子などの補装具や、入浴補助用具、特殊寝台などの日常生活用具の購入費用やレンタル費用の助成。
  • 障害福祉サービス: 居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、同行援護、行動援護、短期入所(ショートステイ)、共同生活援助(グループホーム)など、障害者総合支援法に基づく様々なサービスを利用しやすくなります。これらのサービス利用には「障害福祉サービス受給者証」が必要ですが、手帳の取得がその前提となることが多いです。
  • 相談支援: 障害者基幹相談支援センターや相談支援事業所での専門的な相談やサービス利用計画作成などの支援を受けられます。

その他のメリット

  • 雇用面での優遇: 企業における障害者雇用枠での就職活動が可能です。公務員試験や一部の企業の採用試験で優遇措置がある場合があります。
  • 災害時の支援: 災害発生時における避難支援や情報提供など、要配慮者としての支援を受けやすくなります。

これらのメリットは、障害のある方の経済的な負担を軽減し、社会生活における様々な困難を乗り越えるための助けとなります。手帳を取得することで、利用できる制度やサービスを知り、適切な支援に繋がることが可能になります。

手帳を取得するかどうかは本人の自由意思ですが、取得しないことで受けられるはずだったサービスや支援が受けられないということもあります。ご自身の状況をよく検討し、必要であれば申請を検討してみる価値は十分にあります。

障害者手帳はどこで申請する?

障害者手帳の申請手続きは、お住まいの市区町村役場の窓口で行います。具体的には、福祉課や障害福祉課、健康福祉課など、障害福祉に関する業務を担っている部署です。

  • 申請窓口: お住まいの市区町村役場の障害福祉担当窓口(福祉課、障害福祉課など)
  • 申請書の入手: 申請書や診断書用紙は、上記の窓口で配布されています。一部の自治体では、ホームページからダウンロードすることも可能です。

申請に関する詳細な情報や、必要な書類、手続きの流れなどは、自治体によって若干異なる場合があります。必ず事前に、お住まいの市区町村役場の担当窓口に問い合わせて確認することをおすすめします。

障害者手帳の申請に費用はかかる?

障害者手帳本体の交付や申請手続き自体には、原則として手数料はかかりません。公費で発行されるものです。

ただし、申請に必要な以下の費用は自己負担となります。

  • 医師の診断書・意見書の作成費用: これが申請にかかる主な費用です。診断書料は医療機関によって異なりますが、数千円から1万円以上かかることもあります。
  • 写真代: 申請書に添付する証明写真の撮影費用。
  • その他: 郵送でやり取りする場合の郵送費など。

診断書・意見書は、手帳の種類ごとに定められた様式があり、手帳の種類に応じた「指定医」またはそれに準ずる医師に作成してもらう必要があります。必ず市区町村役場の窓口で正しい様式と必要な医師の要件を確認してから、医療機関に作成を依頼してください。

どうやって障害者手帳を申請する? 具体的な手順

障害者手帳の申請手続きは、以下の流れで進めるのが一般的です。

申請手続きのステップ

  1. 医師への相談・診断:

    まず、ご自身の障害について専門医に相談し、診断を受けます。手帳の対象となる障害であるか、またその程度について医師の判断を仰ぎます。

  2. 診断書・意見書の作成依頼:

    手帳申請に必要な診断書または意見書の作成を医師に依頼します。診断書用紙は市区町村の窓口で入手したものを使用します。身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳の場合は、手帳の種類に応じた「指定医」または自治体が認めた医師に作成してもらう必要があります。療育手帳の場合は、自治体の指定する判定機関(児童相談所や知的障害者更生相談所など)での判定が必要になります。診断書の記載内容が等級判定の重要な根拠となります。

  3. 必要書類の準備:

    以下の書類を準備します。

    • 申請書(市区町村窓口で入手)
    • 医師の診断書または意見書(療育手帳の場合は判定結果など)
    • 顔写真(規定のサイズと枚数。概ね縦4cm×横3cmで1~2枚)
    • マイナンバーを確認できる書類(マイナンバーカード、通知カードなど)
    • 本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)
    • 印鑑(自治体によっては不要)
    • その他、自治体が必要とする書類(例: 年金証書 – 精神障害者手帳の場合、同意書など)

    必要書類は自治体や申請する手帳の種類によって異なる場合があるため、事前に必ず確認してください。

  4. 市区町村窓口への申請:

    準備した書類一式を持参し、お住まいの市区町村役場の障害福祉担当窓口に提出します。窓口で申請内容や書類に不備がないか確認されます。

  5. 審査・判定:

    提出された書類に基づき、都道府県または市区町村(手帳の種類による)において審査や等級判定が行われます。必要に応じて、障害者更生相談所や精神保健福祉センター、児童相談所などが関わります。判定には、診断書の内容や、療育手帳の場合は判定機関での面談・検査などが考慮されます。

  6. 手帳の交付:

    審査・判定の結果、手帳の交付が決定すると、申請者に通知が届きます。通知に従って、再び市区町村の窓口に行き、手帳を受け取ります。交付までにかかる期間は、申請から概ね1ヶ月から3ヶ月程度が目安ですが、自治体や申請内容によってそれ以上かかる場合もあります。

障害者手帳取得後の「どうする?」

無事、障害者手帳を取得した後も、いくつか知っておくべきことや、状況に応じて必要な手続きがあります。

手帳の使い方

割引やサービスを利用する際は、窓口や受付で手帳を提示してください。公共交通機関では、乗車券購入時や改札を通る際に提示を求められることがあります。写真付きの手帳は、本人確認を求められることもあります。手帳本体の携帯が必要な場合が多いですが、一部ではコピーの提示が認められる場合もあります(ただし、割引乗車券の購入などでは原本が必要となることが一般的です)。

有効期限と更新(精神障害者保健福祉手帳)

精神障害者保健福祉手帳には有効期限があり、交付日から2年後の月末までとなっています。有効期限の3ヶ月前から更新手続きが可能です。更新には改めて医師の診断書が必要となりますので、早めに準備を進める必要があります。更新手続きを怠ると、手帳が失効し、各種サービスが受けられなくなります。身体障害者手帳と療育手帳には原則として有効期限はありませんが、再認定が必要な場合があります。

再認定・等級変更の手続き

障害の状態が変化(軽減・悪化)した場合、または将来再認定が必要とされる条件付きで手帳が交付されている場合は、改めて医師の診断を受け、再認定の手続きを行う必要があります。これにより、手帳の等級が見直されることがあります。等級が変更になれば、受けられるサービス内容も変わる可能性があります。

紛失・破損した場合

手帳を紛失したり、汚損・破損したりした場合は、お住まいの市区町村役場の窓口で再交付の申請ができます。再交付には、申請書、顔写真、本人確認書類などが必要となります。警察に遺失物届を出した場合は、受理番号が必要となることもあります。

住所や氏名が変わった場合

転居して住所が変わったり、結婚などで氏名が変わったりした場合は、お住まいの市区町村役場の窓口に届け出る必要があります。転居の場合は、転出元と転入先の両方の自治体で手続きが必要となる場合があります。

障害者手帳は、取得して終わりではなく、適切に利用し、必要に応じて更新や変更の手続きを行うことで、継続的な支援を受けることができます。ご不明な点があれば、いつでもお住まいの市区町村役場の担当窓口に相談してください。


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