【電子請求受付】とは何か?基本的な仕組みと目的

【電子請求受付】とは、取引先から送られてくる請求書を、紙媒体ではなく電子的な形式で受け取る一連のプロセスおよび、それを実現するためのシステムやサービスを指します。従来の紙の請求書が郵便やFAXで届くのに対し、電子請求書は電子メールの添付ファイル、専用のWebポータル、EDI(電子データ交換)などの方法で送られてきます。

その主な目的は、請求書の受領、内容確認、仕訳入力、支払処理といった一連の経理業務をデジタル化・自動化し、業務効率の向上、コスト削減、ヒューマンエラーの削減、内部統制の強化を図ることにあります。
単にPDFを受け取るだけでなく、受け取った請求書のデータを構造化し、社内の会計システムやERP(統合基幹業務システム)と連携させて、自動的に支払処理のワークフローに乗せることまでを含意する場合が多いです。

電子請求書の「受け取り」は具体的にどう進むのか?プロセスの詳細

電子請求受付のプロセスは、システムやサービスの種類、受け取る請求書の形式によって多少異なりますが、一般的な流れは以下のようになります。

受付チャネルと取り込み

まず、サプライヤーから請求書が届く方法は様々です。

  • 電子メール添付: PDFなどの請求書ファイルがメールで送られてきます。システムによっては、特定のメールアドレスに届いた添付ファイルを自動的に取り込む機能があります。
  • Webポータル: 請求書発行システムや電子請求書プラットフォームが提供するポータルサイトに、サプライヤーが請求書をアップロードし、受け取り側がそこからダウンロードします。
  • EDI/API連携: サプライヤーのシステムと自社のシステムが直接、構造化された請求書データを自動的に交換します。Peppolのような標準規格を利用する場合もこれに該当します。
  • ファイル連携: 特定のフォルダに置かれたファイルをシステムが自動的に読み込む方法などもあります。

これらのチャネルを通じて、システムが電子請求書ファイルやデータを受け付けます。

フォーマットの自動判別・データ抽出

受け付けた電子請求書がPDFのような非構造化データの場合、システムはOCR(光学的文字認識)技術やAIを活用して、請求書に記載された情報を自動的に読み取り、データ化します。請求書番号、日付、取引先名、品目、数量、単価、金額、合計、消費税などの項目を認識し、構造化されたデータ形式(例: CSV, XML)に変換します。
最初からXMLやEDIで構造化されたデータで受け取る場合は、この抽出・変換プロセスは不要か、簡易的になります。

内容の自動検証・チェック

抽出されたデータに基づき、システムは様々な自動チェックを行います。

  • 必須項目の漏れチェック: 請求書として必須の情報(請求書番号、日付、合計金額など)がデータに含まれているかを確認します。
  • フォーマットチェック: 日付形式や金額形式が正しいかを確認します。
  • 計算チェック: 品目ごとの金額合計と請求書全体の合計金額が一致するか、消費税計算が正しいかなどを検証します。
  • 取引先マスタとの照合: 請求書に記載された取引先名やコードが、自社の取引先マスタに登録されている情報と一致するかを確認し、誤りや不正な請求を検知します。
  • 過去の請求との重複チェック: 同じ請求書番号や内容で二重に受け取っていないかを確認します。

これらのチェックでエラーが検出された場合は、経理担当者への通知や、システム上でのフラグ付けが行われます。

ワークフローへの連携と承認

検証を通過した請求書データは、あらかじめ設定された支払い承認ワークフローに自動的に連携されます。例えば、部署の責任者、担当役員といった承認ルートに乗せられ、システム上で内容確認と承認が行われます。
この際、抽出された請求書データだけでなく、オリジナルの電子請求書ファイル(PDFなど)も同時に参照できるようになっています。
承認されたデータは、最終的に社内の会計システムやERPシステムに連携され、支払伝票の自動起票や支払予定の登録が行われます。

長期保存(電子帳簿保存法対応)

受領した電子請求書ファイルや、そこから抽出されたデータは、電子帳簿保存法などの法令に基づき、真実性や可視性を確保した形で一定期間(通常7年)保存されます。システムによっては、タイムスタンプ付与や版管理、索引情報の付与といった、長期保存に必要な機能を提供しています。

このように、電子請求受付は単なるファイル受信ではなく、データの抽出、検証、ワークフロー連携、会計システムへの取り込み、そして法令に準拠した長期保存までを含む、一連の自動化された処理プロセスなのです。

受け付け可能な電子請求書の「種類」とは?多様なフォーマットに対応

電子請求受付システムは、様々な形式の電子請求書に対応しています。主な種類は以下の通りです。

  • PDF形式:

    最も一般的で広く利用されています。メール添付などで送られてくることが多く、サプライヤー側も特別なシステムがなくても発行しやすいのが特徴です。ただし、PDF自体は画像や文字情報の集まりであり、構造化されたデータではないため、受け取り側はOCRなどを使ってデータ化する必要があります。

  • XML形式:

    請求書の項目(請求先、金額、日付など)がタグ付けされ、構造化されたデータ形式です。コンピューターが直接内容を理解しやすいため、システム間の連携がスムーズに行えます。EDIやPeppolなどの標準規格で用いられます。

  • EDI(電子データ交換)形式:

    企業間で商取引データを専用回線やインターネットを通じて交換するための形式です。請求書だけでなく、発注書や納品書なども含めて、企業間の取引全体を電子化するために使われます。古くからある標準(例: UN/EDIFACT, JCA-EDI)や、インターネットEDI(例: Web-EDI)などがあります。

  • Peppol形式:

    国際的な電子インボイスの標準規格およびネットワークです。日本でもデジタル庁が推進しており、今後はこの形式でのやり取りが増える可能性があります。XMLをベースとした構造化データで、相互運用性が高いのが特徴です。

  • プラットフォーム固有形式:

    特定の電子請求書発行・受領サービスやシステムの利用者同士でやり取りされる独自のデータ形式です。同じプラットフォームを使っている企業間であれば、容易にデータ連携が可能です。

高品質な電子請求受付システムは、これらの複数の形式に対応し、フォーマットが異なる請求書でも一元的に受け付けて処理できる機能を提供します。

なぜ今、【電子請求受付】が必要なのか?導入の「理由」と「メリット」

【電子請求受付】の導入が進んでいる背景には、業務効率化やコスト削減といった企業内部の課題だけでなく、法改正や社会情勢の変化も大きく影響しています。主な理由とメリットは以下の通りです。

業務効率の劇的な向上

  • 手作業の削減: 紙の請求書の開封、内容確認、システムへの手入力、保管といった煩雑な手作業が不要になります。
  • 処理スピードアップ: 自動取り込み、データ化、検証により、請求書が経理部門に届いてから支払い承認フローに乗るまでの時間が大幅に短縮されます。
  • 情報の一元管理: 受け取った全ての請求書データやファイルがシステム上で一元管理されるため、検索や確認が容易になります。

コスト削減効果

  • 紙関連コスト削減: 印刷、郵送、保管にかかるコスト(紙代、インク代、切手代、ファイリング用品、保管スペース代など)が削減できます。
  • 人件費削減: 請求書処理にかかる時間が減ることで、その分の人的資源をより戦略的な業務に振り分けることが可能になります。
  • 保管コスト削減: 紙の請求書を物理的に保管するスペースや、外部倉庫を利用するコストが不要になります。

入力ミスや紛失リスクの低減

  • 入力ミスの防止: OCRや自動データ連携により、手入力による転記ミスや計算ミスを防ぎます。
  • 紛失リスクの防止: 電子データとしてシステム管理されるため、紙の請求書のように物理的に紛失するリスクがなくなります。
  • 二重払いの防止: システムによる自動チェックで、同じ請求書を重複して処理してしまうミスを防ぎます。

コンプライアンス強化と法対応

  • 電子帳簿保存法への対応: 法令で定められた要件(真実性、可視性)を満たした形で電子請求書を保存しやすくなります。特に改正電子帳簿保存法への対応は、電子取引データの保存が義務化されたため、多くの企業で電子請求受付システム導入の大きな動機となっています。
  • インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応: 受領した請求書が適格請求書として必要な記載事項を満たしているか、システム上で自動的にチェックする機能などが、インボイス制度への対応を支援します。
  • 内部統制の強化: 誰が、いつ、どのような処理を行ったかのログがシステム上に残るため、証跡管理が容易になり、不正防止や内部監査に役立ちます。

場所を選ばない業務体制の実現

クラウド型の電子請求受付システムを利用すれば、インターネット環境さえあればどこからでも請求書の確認や承認作業が可能になります。これにより、リモートワークやサテライトオフィスでの業務をスムーズに進めることができます。

サプライヤーとの連携強化

電子でのやり取りに統一することで、サプライヤー側も発行・送付の手間が軽減される場合があり、企業間のスムーズなコミュニケーションに繋がります。

【電子請求受付】システムは「どこ」で稼働し、「誰」が利用するのか?

電子請求受付システムは、主に以下の環境で稼働し、様々な部署の担当者が利用します。

システム稼働環境

  • クラウド型(SaaS):

    サービス提供事業者のデータセンターにシステムが構築されており、利用者はインターネット経由でアクセスします。自社でのサーバー構築や運用管理が不要なため、導入が比較的容易で初期費用を抑えやすいのが特徴です。月額または年間での利用料が発生します。多くのベンダーがこの形式で提供しています。

  • オンプレミス型:

    自社のサーバー環境にシステムを構築します。自社の既存システムとの連携や、セキュリティポリシーに合わせたカスタマイズの自由度が高い反面、初期費用が高額になりがちで、自社でシステムの運用・保守を行う必要があります。最近では電子請求受付単独のシステムでオンプレミス型は少なくなり、ERPなどの一機能として提供されることが多いです。

現在は、導入の手軽さ、運用負担の少なさ、法改正への対応の迅速さなどから、クラウド型を選択する企業が主流となっています。

主な利用者部署

  • 経理部門: 請求書の受付、内容確認、仕訳処理、支払い準備といった中心的な業務を行います。最もシステムを利用する頻度が高い部署です。
  • 購買・調達部門: 発注情報と突き合わせて、請求内容の正当性を確認する場合があります。特に物品購入などに関わる請求書の場合に利用します。
  • 事業部門・担当者: 部署に関連する請求書の内容確認や、支払い承認ワークフローにおける承認者としてシステムを利用します。
  • 情報システム部門: システムの導入・設定、ベンダーとの連携、他システムとの連携設定、利用者管理、セキュリティ管理などを行います。
  • 監査部門: 内部統制やコンプライアンスの観点から、システム上の処理ログや保管されている請求書データを監査のために参照する場合があります。

このように、電子請求受付システムは経理部門が中心となりつつも、組織全体で連携して利用される基盤となり得ます。

導入・運用にかかる「費用」は「いくら」?コスト構造とROI

電子請求受付システムにかかる費用は、システムの提供形態(クラウドかオンプレミスか)、機能範囲、利用規模(受け付ける請求書の枚数やユーザー数)、ベンダーによって大きく異なります。主な費用要素は以下の通りです。

初期導入費用

  • システム設定費: 自社の業務フローや会計システムに合わせてシステムを初期設定するための費用です。
  • 既存システムとの連携費: 会計システムやERPなど、既存のシステムと連携するための開発費用や設定費用です。API連携やデータ変換が必要な場合に発生します。
  • 初期ライセンス費用(オンプレミスの場合): システムソフトウェア自体の購入費用です。
  • ハードウェア費用(オンプレミスの場合): サーバーなどのインフラ構築にかかる費用です。
  • プロジェクト管理費用: 導入プロジェクト全体の管理にかかる費用です。

クラウド型の場合は、これらの初期費用が比較的抑えられていることが多いですが、連携やカスタマイズの度合いによっては別途費用が発生します。

月額/年間運用費用(主にクラウド型)

  • 基本利用料: システムの利用権に対する固定費です。利用できる機能の範囲によってプランが分かれていることがあります。
  • 処理量に応じた従量課金: 受け付けた請求書の枚数や、OCR処理を行った枚数などに応じて費用が変動する場合があります。規模が大きい企業ほどこの部分の費用が大きくなる可能性があります。
  • ユーザー数に応じた課金: システムを利用できるユーザー数に基づいて費用が決まる場合があります。
  • オプション機能利用料: 高度な分析機能や、特定の連携機能などを利用する場合に発生する費用です。
  • 保守サポート費用: システムのアップデート、問い合わせ対応などのサポートを受けるための費用です。クラウド型の場合は基本利用料に含まれていることが多いですが、オンプレミス型では別途契約が必要な場合があります。

費用対効果(ROI)の考え方

電子請求受付システムの導入効果を測るには、上記の費用だけでなく、削減できるコストや向上する効率を定量的に評価することが重要です。

  • 削減コスト:
    • 紙、印刷、郵送、保管費用
    • 手作業にかかっていた人件費(〇時間/月 × 時給)
    • 誤入力や紛失による手戻りや損害コスト
  • 向上する効率:
    • 請求書処理時間の短縮によるリードタイム改善
    • 経理担当者がより付加価値の高い業務に割ける時間
    • リモートワーク対応による柔軟な働き方の実現

これらの削減効果や効率向上によるメリットが、導入・運用にかかる費用をどれくらいの期間で上回るか(投資回収期間)、あるいは年間どれくらいの経済効果を生み出すか(ROI)を試算することで、導入の妥当性を判断します。特に、処理枚数が多い企業ほど、その効果は顕著に現れる傾向があります。

自社に合った【電子請求受付】システムは「どうやって」選ぶ?選定のポイント

数多くのベンダーから電子請求受付システムが提供されており、自社に最適なシステムを選ぶことは容易ではありません。以下のポイントを考慮して比較検討を進めましょう。

  1. 対応フォーマットと受付チャネル:

    自社のサプライヤーがどのような形式(PDF, XML, EDI, Peppolなど)で請求書を発行しているか、またどのような方法(メール、ポータル、EDIなど)で送ってくるかを把握し、それらに幅広く対応できるシステムを選びましょう。将来的なPeppol対応なども考慮に入れると良いでしょう。

  2. 既存システム(会計システム、ERP)との連携性:

    受領した請求書データを社内の基幹システムにスムーズに取り込めるかは非常に重要です。API連携、ファイル連携、データベース連携など、どのような連携方法に対応しているか、また自社の既存システムと実績があるかを確認しましょう。連携がスムーズでないと、結局手作業が発生し、導入効果が半減してしまいます。

  3. データ化(OCR/AI-OCR)の精度と機能:

    PDFなどの非構造化データを多く受け取る場合、データ抽出精度は業務効率に直結します。様々なレイアウトの請求書に対応できるか、認識精度は高いか、修正作業は容易かなどを評価しましょう。AI-OCRは学習によって精度が向上するため、その学習機能も比較ポイントになります。

  4. 自動検証・チェック機能:

    請求書内容の自動検証機能がどれだけ充実しているか(必須項目チェック、計算チェック、取引先マスタ照合、重複チェックなど)は、経理担当者の確認作業をどれだけ削減できるかに影響します。

  5. ワークフロー機能の柔軟性:

    請求書の承認プロセスは企業によって異なります。自社の承認ルートやルールに合わせて、ワークフローを柔軟に設定できるかを確認しましょう。代理承認や条件分岐などの機能があると便利です。

  6. 電子帳簿保存法への対応機能:

    タイムスタンプ付与、検索機能の確保(取引年月日、取引金額、取引先で検索できるか)、改変防止措置などが法令要件を満たしているかを確認します。システムの機能だけで対応できるか、運用でカバーする必要があるかなども確認が必要です。

  7. セキュリティ体制と信頼性:

    機密性の高い情報を取り扱うため、システムのセキュリティ対策は非常に重要です。データ暗号化、アクセス権限設定、不正アクセス対策、ISO27001などの第三者認証の取得状況などを確認しましょう。ベンダーの信頼性やサポート体制も評価基準となります。

  8. コスト構造と費用対効果:

    初期費用、月額/年間費用、従量課金の有無など、コスト構造を把握し、自社の請求書処理量や予算に合ったシステムを選びましょう。単に価格だけでなく、期待できる効果(削減できる人件費、時間など)を含めた費用対効果で比較することが重要です。

  9. 操作性とUI:

    経理担当者や承認者が日常的に利用するため、直感的で分かりやすい操作性であるかが重要です。無料トライアルなどを活用して、実際の画面や操作感を確かめましょう。

これらのポイントを総合的に評価し、複数のシステムを比較検討することで、自社の課題を解決し、最大の効果を発揮できるシステムを見つけることができます。

【電子請求受付】システムの「セキュリティ」と「コンプライアンス」

請求書には企業の機密情報や取引情報が含まれるため、【電子請求受付】におけるセキュリティとコンプライアンスへの対応は極めて重要です。

セキュリティ対策

システムベンダーが講じているべき主なセキュリティ対策は以下の通りです。

  • 通信の暗号化: 請求書データがインターネット経由で送受信される際に、SSL/TLSなどを用いて通信内容が傍受されないようにします。
  • データの暗号化: システム内部で保管される請求書データが暗号化されており、万が一データ漏洩が発生しても内容が容易に解読できないようにします。
  • アクセス権限管理: ユーザーごとにシステム内で閲覧・操作できる範囲を細かく設定し、関係者以外のアクセスを制限します。
  • 操作ログの記録: 誰が、いつ、どのような請求書に対して、どのような操作を行ったか(閲覧、承認、削除など)を記録し、不正行為の追跡や原因究明ができるようにします。
  • 脆弱性対策: システムの脆弱性を定期的にチェックし、必要なセキュリティパッチを適用します。
  • データバックアップと災害対策: 定期的なデータバックアップを行い、システム障害や災害発生時にもデータを復旧できる体制を構築しています。

法的要件への対応(電子帳簿保存法など)

日本の企業が電子請求書を保存する上で最も重要となるのが電子帳簿保存法への対応です。特に、2022年1月の改正により、電子取引データ(メール添付で受け取ったPDF請求書など)は電子的なまま保存することが義務化されました(宥恕期間あり)。電子請求受付システムは、この義務に対応するための機能を提供しています。

  • 真実性の確保:
    • タイムスタンプの付与: 請求書データが改ざんされていないことを証明するために、受領後速やかにタイムスタンプを付与する機能。
    • 訂正・削除履歴の確保: データの訂正や削除を行った場合に、その履歴が残るシステムで処理・保存する機能。
    • 訂正・削除ができない(または限定された)システムで保存する機能。
  • 可視性の確保:
    • 検索機能の確保: 「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つの項目で検索できる機能。税務調査の際に、必要に応じて税務職員にデータをダウンロードしてもらう、あるいは印刷して提出できるなどの対応も求められます。
    • システム概要書の備え付けなど(システムの要件)。

システムを選定する際は、これらの電子帳簿保存法の要件を満たしているか、具体的にどのような機能で対応しているかをベンダーにしっかりと確認する必要があります。また、インボイス制度(適格請求書等保存方式)に必要な記載事項(登録番号など)をシステムで管理・確認できる機能も、今後のコンプライアンス対応において重要になります。

既存の業務システムと「どう連携」させるか?インテグレーションの重要性

電子請求受付システムを導入する最大のメリットの一つは、経理業務全体の効率化です。これを実現するためには、システム単独で完結するのではなく、社内の他の基幹システムとの連携が不可欠です。

連携がうまくいかないと、請求書データを受け付けてデータ化できても、結局そのデータを手作業で会計システムに入力し直す、といった非効率が発生してしまいます。スムーズな連携こそが、真の自動化と効率化への鍵となります。

連携対象となる主なシステム

  • 会計システム/ERPシステム: 請求書データを仕訳データとして自動的に起票したり、支払予定リストに登録したりするために連携します。最も重要な連携先です。
  • 購買管理システム/SCMシステム: 発注データや入庫データと請求書データを照合し、請求内容の正確性を検証するために連携します。
  • ワークフローシステム: 請求書の承認プロセスを既存のワークフローシステムで行っている場合に連携し、承認されたデータをスムーズに受け渡します。
  • 取引先マスタ/部門マスタ: 請求書に記載された取引先名や部門コードを、自社のマスタ情報と照合するために連携します。

連携方法の例

  • API連携: システム同士がリアルタイムまたはほぼリアルタイムでデータを交換する最も進んだ方法です。双方向のデータ連携が可能で、柔軟な連携が実現できます。
  • ファイル連携(CSV, XMLなど): あるシステムから中間ファイル(CSVやXML形式など)を出力し、別のシステムがそれを読み込む方法です。比較的多くのシステムが対応しており、汎用性が高いですが、リアルタイム性には欠けます。
  • データベース連携: システムが直接、連携先システムのデータベースにアクセスしてデータを読み書きする方法です。セキュリティやシステム構成に深い理解が必要となります。
  • RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション): システム間の連携が難しい場合に、RPAツールを使って人間の画面操作を模倣し、データを転記する方法です。ただし、システム側の画面仕様変更に弱いという側面もあります。

システム選定時には、自社が現在利用している会計システムやERPシステムと、候補となる電子請求受付システムがどのような連携方法に対応しているか、また過去に連携実績があるかなどを必ず確認しましょう。ベンダーによっては、特定の会計システムとの連携アダプターを提供している場合もあります。スムーズなインテグレーションを実現するためには、導入計画段階でシステム連携の要件を明確にし、ベンダーと密接に協力して進めることが不可欠です。


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