【特定親族特別控除申告書】とは何ですか?
特定親族特別控除申告書とは、所得税や住民税の計算において、特定の親族を扶養している納税者が所得控除を受けるために提出する書類の一部です。正確には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「所得税確定申告書」などの税務書類の中に、特定親族に関する情報を記載する欄があり、その情報を記載することで、税務署や会社に対して控除の適用を申告します。
「特定親族特別控除」とは、扶養控除の一種で、特に19歳以上23歳未満の扶養親族に対して適用される控除額が大きいものです。この年齢層の親族は、多くの場合、大学や専門学校等に通っており、教育費などの負担が大きいことから、税法上、より手厚い控除が認められています。この控除を適用するためには、その親族が税法上の「扶養親族」の要件を満たしていることに加え、その年の12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満であることが必要です。
つまり、この申告書(該当欄への記載)は、あなたが税法上の要件を満たす19歳以上23歳未満の親族を扶養していることを税務当局や勤務先に伝え、その特別な控除を受けるための「申請書類」としての役割を果たすのです。
なぜ特定親族特別控除の申告が必要なのですか?
特定親族特別控除の申告が必要な理由は、主に以下の2点です。
- 税負担を軽減するため: この控除を適用することで、あなたの課税される所得(課税所得)が減少します。課税所得が減れば、それに掛かる所得税や住民税の額も少なくなるため、結果として税金が安くなります。申告をしないと、この控除は自動的には適用されないため、本来納めるべき税金よりも多く税金を納めてしまうことになります。
- 年末調整や確定申告の手続きを進めるため: 給与所得者の場合、通常、会社が年末調整で税金の精算を行います。特定親族特別控除を年末調整で受けるためには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に特定親族の情報を正確に記載して会社に提出する必要があります。自営業者や給与所得者でも年末調整で申告し忘れた場合などは、確定申告を行う際に、確定申告書の該当欄に記載して申告する必要があります。いずれの場合も、この申告行為があって初めて控除が適用されます。
特定親族特別控除は、一般的な扶養控除(一般扶養親族)よりも控除額が大きいため、税金への影響も大きくなります。この制度を知らずに申告を忘れてしまうと、大きな税務上のメリットを逃すことになります。したがって、この控除の対象となる親族がいる場合は、必ず適切な方法で申告を行うことが非常に重要です。
どのような親族が特定親族特別控除の対象となりますか?
特定親族特別控除の対象となる「特定親族」とは、税法上の扶養親族のうち、以下の全ての要件を満たす親族を指します。
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あなた(納税者)またはあなたの配偶者と生計を一にしていること。
(「生計を一にする」とは、必ずしも同居している必要はありません。例えば、単身赴任中の夫への仕送りや、修学・療養等のために別居している子供への生活費や学費等の送金を行っている場合なども該当します。) - 年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与所得のみの場合は、給与等の収入金額が103万円以下に相当します。)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
- あなたの配偶者でないこと。(配偶者は配偶者控除や配偶者特別控除の対象となります。)
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親族であること。
(6親等内の血族及び3親等内の姻族を指します。具体的には、あなたの子供、孫、ひ孫、父母、祖父母、曾祖父母、兄弟姉妹、甥、姪、叔父、叔母、伯父、伯母、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹などが含まれます。) -
その年の12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満であること。
(例えば、令和5年分の所得税については、平成12年1月2日から平成16年1月1日までの間に生まれた方が該当します。年齢は、「その年の12月31日」の現況で判定されます。)
これらの要件をすべて満たす親族がいれば、その親族は特定親族特別控除の対象となります。特に最後の「19歳以上23歳未満」という年齢要件が、他の扶養親族との違いです。お子さんなどがこの年齢に該当する場合は、忘れずに申告するようにしましょう。
特定親族特別控除の控除額はいくらですか?
特定親族特別控除の控除額は、扶養親族一人につき年間63万円です。
特定親族特別控除額:63万円/人
これは、一般的な扶養控除(一般扶養親族、16歳以上19歳未満及び23歳以上70歳未満の扶養親族)の控除額38万円と比較して、25万円大きい額です。
所得税の税率は所得額に応じて異なりますが、例えば所得税率が10%の方であれば、63万円の控除により所得税が63,000円軽減されます。さらに、住民税においても、所得税の扶養控除に対応する住民税の扶養控除(特定扶養親族は45万円の控除が一般的)が適用されるため、住民税も軽減されます。住民税率は通常10%なので、住民税も45,000円程度軽減される見込みです。合計すると、所得税と住民税で年間10万円以上の税負担軽減効果が期待できます。
この63万円という金額は、所得から差し引かれる金額(所得控除)であり、直接税額から差し引かれる税額控除とは異なりますが、課税所得を大幅に減らす効果があるため、大きな税務上のメリットとなります。
特定親族特別控除申告書はどこで入手できますか?
特定親族特別控除の申告は、主に年末調整または確定申告で行われます。申告に用いる書類は、手続きの方法によって入手場所が異なります。
年末調整で申告する場合(給与所得者)
勤務先から配布される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を使用します。この申告書の中に、扶養親族に関する情報を記載する欄があり、そこに特定親族の情報を記載します。通常、毎年10月下旬から11月頃にかけて会社から従業員に配布されます。紛失したり、年度の途中で扶養親族に異動(例えば、お子さんが19歳になるなど)があった場合は、会社の経理担当者等に申し出て再発行または異動申告書の提出を依頼してください。
確定申告で申告する場合
以下の方法で入手できます。
- 国税庁ホームページからのダウンロード: 国税庁のホームページには、所得税の確定申告書の様式が掲載されています。申告書A様式(給与所得者などが使用)、申告書B様式(事業所得者などが使用)のいずれにも、扶養控除を記載する欄があります。必要な様式をダウンロードして印刷して使用できます。
- 税務署: 最寄りの税務署の窓口で確定申告書の様式を入手できます。
- 市区町村の役場: 一部の市区町村の役場でも、確定申告書の様式を配布している場合があります。
- 税務署が設置する確定申告会場: 確定申告期間中(通常2月中旬から3月中旬)に設置される申告会場でも入手できます。
確定申告書自体が「特定親族特別控除申告書」の役割を兼ねているため、特定の様式があるわけではなく、確定申告書の該当欄に記載することになります。
特定親族特別控除申告書(該当箇所)はどのように記入しますか?
給与所得者が年末調整で提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を例に、特定親族特別控除に関わる部分の主な記入方法を説明します。
「控除対象扶養親族」の欄
申告書の左側にある「控除対象扶養親族」の欄に記入します。この欄は、年齢によって扶養親族を区分して記入するようになっています。
- 氏名: 特定親族の氏名を記入します。
- マイナンバー: 特定親族のマイナンバー(個人番号)を記入します。
- 続柄: 納税者本人との続柄(例:子、孫、父、母など)を記入します。
- 生年月日: 特定親族の生年月日を記入します。この生年月日が、その年の12月31日現在で19歳以上23歳未満であることを確認するために非常に重要です。
- 同居老親等以外の者: 特定親族は通常、この区分に該当します。「特定」の欄にチェック(または〇印)を付けます。
- 住所又は居所: 特定親族の住所を記入します。納税者と別居している場合でも、生計を一にしている場合は扶養親族に該当しますので、別居先の住所を記入します。
- 所得の見積額: その年の1月1日から12月31日までの間に特定親族が得ると見込まれる合計所得金額を記入します。この金額が48万円以下であることを確認してください。(給与収入のみの場合は、収入金額が103万円以下であるかを確認してください。)
- 扶養控除の区分: 扶養控除の種類をチェック(または〇印)で示します。特定親族の場合は、年齢に応じて「特定扶養親族」の区分にチェックを付けます。申告書の様式によっては、「特定」という欄と年齢を確認するための欄が分かれている場合もあります。生年月日から19歳以上23歳未満であることを確認し、「特定」にチェックを付けます。
注意点:
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生年月日は和暦・西暦の指定がある場合がありますので、様式に従って正確に記入してください。
* マイナンバーの記入漏れや誤りがないか確認してください。
* 「所得の見積額」は、必ず本人の所得を確認して記入してください。アルバイト収入などがある場合は、源泉徴収票などで確認が必要です。
* 16歳未満の扶養親族については、この控除対象扶養親族の欄ではなく、「16歳未満の扶養親族」の欄に記入します。混同しないように注意してください。特定親族は16歳以上です。
確定申告書の場合も、基本的には同様の情報を確定申告書の「扶養控除」欄に記載することになります。様式によって記入箇所や項目名が若干異なる場合がありますので、申告書の説明書きや手引きをよく確認しながら記入してください。国税庁の確定申告書作成コーナー(e-Tax)を利用すると、画面の案内に従って入力できるため、記入ミスを減らすことができます。
特定親族特別控除申告書はいつ、どこに提出しますか?
特定親族特別控除の申告書類(該当箇所への記載)の提出時期と提出先は、年末調整で申告するか、確定申告で申告するかによって異なります。
年末調整で申告する場合(給与所得者)
- 提出時期: 通常、その年の最後の給与の支払いを受ける日の前日までです。多くの会社では、10月下旬から11月頃に申告書の提出を求められます。会社が指定する期限までに提出する必要があります。年度の途中で扶養親族に異動があった場合は、速やかに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。
- 提出先: 勤務先(会社)です。会社の経理担当者などに提出します。
年末調整で提出することで、会社の給与計算担当者が月々の源泉徴収税額を調整し、年末の最終的な所得税額を計算してくれます。
確定申告で申告する場合
年末調整で特定親族特別控除の申告を忘れてしまった場合や、給与所得者でない方(自営業者など)は、確定申告で申告します。
- 提出時期: 毎年原則として2月16日から3月15日までです。この期間内に、前年分の所得について確定申告書を提出します。
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提出先: 管轄の税務署です。以下のいずれかの方法で提出できます。
- 税務署に郵送または持参
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用してオンラインで送信
- 税務署が設置する確定申告会場で提出(会場での提出は大変混雑することがあります)
確定申告書に特定親族に関する情報を正確に記載することで、特定親族特別控除が適用され、源泉徴収された税金が還付されたり、納める税金が少なくなったりします。
年末調整での申告を忘れた場合でも、確定申告期間内に自分で確定申告を行えば、さかのぼって控除を受けることが可能です。これを「還付申告」といい、過去5年間まで遡って申告することができます。
特定親族特別控除の申告を忘れたらどうなりますか?
特定親族特別控除の申告を忘れてしまった場合、その控除が所得計算に反映されません。その結果、本来適用されるはずだった所得控除額(63万円)が差し引かれないため、税金が本来よりも多く計算されてしまいます。
具体的には、以下の影響が出ます。
- 所得税が高くなる: 年末調整で申告し忘れた場合、本来よりも多くの所得税が源泉徴収されたままとなります。確定申告で申告し忘れた場合も、納める所得税額が多くなります。
- 住民税が高くなる: 所得税と同様に、住民税の計算においても扶養控除が適用されないため、納める住民税額が高くなります。
- 還付金が少なくなる、または発生しない: 本来であれば税金が還付されるはずだったのに、還付されなかったり、還付額が少なくなったりします。
しかし、申告を忘れた場合でも、救済措置があります。
申告を忘れた場合の対応
還付申告を行う:
年末調整や確定申告で特定親族特別控除の申告を忘れた場合でも、過去5年間については「還付申告」を行うことで、納めすぎた税金の還付を受けることができます。
還付申告は、確定申告期間に関係なく、対象となる年の翌年1月1日から5年間提出することができます。(例えば、令和4年分の所得税については、令和5年1月1日から令和9年12月31日まで還付申告が可能です。)
税務署で確定申告書を作成し、特定親族の情報を記載して提出することで、税金が再計算され、過払い分の税金が指定の口座に還付されます。この際、特定親族の氏名、生年月日、マイナンバーなどの情報が必要になります。
控除対象となる親族がいるにも関わらず申告し忘れてしまったことに気づいたら、速やかに還付申告の手続きを検討することをおすすめします。税務署の窓口や国税庁のホームページにある確定申告書作成コーナーを利用すれば、比較的容易に手続きを進めることができます。
特定親族特別控除の申告に必要な書類はありますか?
特定親族特別控除の申告自体に、通常、特別な証明書類を添付する必要はありません。
年末調整で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する場合も、確定申告で確定申告書を提出する場合も、特定親族の氏名、生年月日、続柄、マイナンバー、その年の所得の見積額などを申告書に記載することで足ります。生計を一にしていることや、所得が基準以下であること、19歳以上23歳未満であることなどを証明する書類(例えば、戸籍謄本、住民票、収入を証明する書類など)を申告書と一緒に提出することは、通常は求められません。
ただし、税務署から申告内容について問い合わせがあった場合や、税務調査が行われた場合などには、申告した内容(例えば、生計を一にしていることや、親族の所得状況など)を証明するための書類の提示や提出を求められることがあります。例えば、別居している親族への送金を証明する書類(振込明細書など)や、親族の収入が少ないことを証明する書類などが考えられます。
例外:国外に居住する扶養親族の場合
扶養親族が日本国外に居住している場合は、通常、送金関係書類や親族関係書類の添付または提示が必要となります。これは、国内の扶養親族とは異なる特別な要件が定められているためです。
したがって、国内に居住する特定親族を扶養している場合、申告書を提出する際に添付書類は原則不要ですが、申告内容に関する確認があった場合に備えて、生計状況などがわかる資料は手元に保管しておくと安心です。
特定親族特別控除は、教育費などがかかる若い世代を扶養する納税者にとって、非常にメリットの大きい税制上の措置です。対象となる親族がいる場合は、忘れずに申告を行い、税負担の軽減を図りましょう。年末調整や確定申告の機会に、ご自身の扶養親族の状況を改めて確認してみてください。