雇用保険加入条件とは?誰が、どのような場合に加入する?
雇用保険は、労働者が失業した場合や雇用の継続が困難となった場合に、生活や雇用の安定を図り、再就職を促進するための公的な保険制度です。事業主(会社)は、雇用保険の適用事業所となった場合、原則としてその事業所に雇用される労働者を雇用保険の被保険者として加入させる義務があります。
では、どのような労働者がこの雇用保険に加入する必要があるのでしょうか?「雇用保険加入条件」は、主に以下の二つの要件によって定められています。
雇用保険加入条件の二つの柱
雇用保険の被保険者となるための最も基本的な条件は、以下の両方を満たすことです。
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週の所定労働時間が20時間以上であること
雇用契約において定められている1週間の労働時間が20時間以上である必要があります。これは実労働時間ではなく、あくまで契約上の労働時間です。例えば、週3日勤務で1日7時間労働の場合、週の所定労働時間は21時間となり、この条件を満たします。シフト制などで週によって労働時間が変動する場合は、雇用契約書などで定められた「平均的な週の労働時間」や「所定労働時間」が判断基準となります。
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31日以上の雇用見込みがあること
雇用された時点で、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる必要があります。具体的には、以下のいずれかに該当する場合に「31日以上の雇用見込みがある」と判断されます。
- 期間の定めがなく雇用されている場合(正社員など)
- 雇用期間が31日以上である場合
- 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの定めがない場合
- 雇用契約に更新規定はないが、同様の雇用契約で雇用された者が31日以上雇用された実績がある場合(これを考慮して判断することがあります)
最初の契約期間が31日未満であっても、上記のように更新が見込まれる場合や、過去の実績から判断される場合があります。
雇用形態による加入条件の違いは?
正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど、雇用形態の名称によって加入条件が変わるわけではありません。上記の「週の所定労働時間20時間以上」と「31日以上の雇用見込み」という二つの条件を満たしているかどうかが判断の基準となります。
- 正社員: 通常、週の所定労働時間は20時間以上であり、雇用期間の定めもない(または長期)ため、特別な事情がない限り雇用保険の加入対象となります。
- パート・アルバイト: 週の所定労働時間が20時間未満の場合は雇用保険の加入対象となりません。週20時間以上働き、かつ31日以上の雇用見込みがあれば、パートやアルバイトであっても加入対象となります。
- 契約社員: 契約期間が定められていても、その期間が31日以上であれば、または更新によって31日以上働く見込みがあれば加入対象となります。最初の契約期間が31日未満でも、更新の可能性や過去の実績によって加入が必要となるケースがあります。
雇用保険の加入が免除される主なケース
上記の条件を満たしていても、雇用保険への加入が免除される(被保険者とならない)場合があります。主なケースは以下の通りです。
- 昼間学生(通信制や夜間など、学業と両立できる場合は加入対象となることがあります)
- 法人の代表者、理事など(取締役であっても同時に労働者としての側面を持つ場合は加入対象となることがあります)
- 個人事業主と同居している親族(原則として適用外ですが、例外的に労働者として認められるケースもあります)
- 船員保険の被保険者(雇用保険ではなく船員保険が適用されるため)
- 国の事業に雇用される者の一部
- 季節的に雇用される者や短期の雇用で日雇労働被保険者とならない者の一部
雇用保険の加入手続きはどのように行われる?どこに届け出る?
労働者が雇用保険の加入条件を満たした場合、加入手続きを行うのは事業主(会社)の義務です。労働者自身が個人的に手続きを行うことはありません。
手続きの流れと提出先
事業主は、労働者を雇用保険の被保険者とした際に、事業所の所在地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に所定の書類を提出して手続きを行います。
- 労働者を雇用(雇用保険加入条件を満たすことを確認)
- ハローワークへの届出書類の作成
- 管轄のハローワークへ書類を提出
- ハローワークから「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」などが交付される
- 事業主は、労働者へ「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」などを渡す
手続きの期限
労働者が雇用保険の加入条件を満たした(被保険者となった)日から、10日以内にハローワークへ書類を提出する必要があります。
手続きに必要な主な書類
事業主がハローワークへ提出する書類は複数ありますが、主なものは以下の通りです。
- 雇用保険被保険者資格取得届: 新たに雇用保険の被保険者となる労働者の情報(氏名、生年月日、性別、住所、マイナンバー、賃金、週所定労働時間など)を記載する書類です。
- 賃金台帳: 労働者の賃金の状況を確認するために必要となる場合があります。
- 出勤簿またはタイムカード: 労働時間を確認するために必要となる場合があります。
- 労働条件通知書または雇用契約書: 労働時間や雇用期間、賃金などの雇用条件を確認するために必要となる場合があります。
- (離職票など): 前職がある場合、被保険者期間の引き継ぎなどのために提出を求められることがあります。(ただし、多くの場合、取得届のみで手続き可能です。)
被保険者証・資格取得等確認通知書とは?
以前は「雇用保険被保険者証」というカードが発行されていましたが、現在は原則として発行されていません。代わりに、ハローワークでの手続きが完了すると、事業主を通じて労働者へ「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」が交付されます。この通知書で、雇用保険に加入したことや、被保険者番号などを確認できます。大切な書類なので、紛失しないよう保管しておく必要があります。
雇用保険料はいくら?誰が負担する?
雇用保険は保険制度ですので、被保険者である労働者と事業主がそれぞれ保険料を負担します。
保険料の計算方法
雇用保険料は、原則として「賃金総額 × 雇用保険料率」で計算されます。賃金総額には、基本給のほか、残業手当、通勤手当、家族手当なども含まれます。ただし、臨時に支払われる賃金(結婚祝金など)や、年3回以下の賞与など、一部含まれないものもあります。
保険料の負担割合
計算された保険料は、労働者負担分と事業主負担分に分けられます。具体的な割合は、その年度の雇用保険料率によって定められています。
- 労働者負担分: 給与から天引きされます。
- 事業主負担分: 会社が負担します。
保険料率は年度ごとに見直されることがあり、一般の事業と農林水産・清酒製造の事業、建設の事業でそれぞれ異なります。最新の保険料率については、厚生労働省のウェブサイトやハローワークで確認できます。
自身が雇用保険に加入しているか確認する方法
会社が手続きをしてくれたはずだけど、本当に雇用保険に加入できているのか不安…。そんな時は、以下の方法で確認できます。
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会社に確認する:
最も簡単な方法は、会社の給与計算担当者や人事担当者に確認することです。「雇用保険に加入できているか確認したいのですが」と尋ねてみましょう。加入済みであれば、前述の「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」の控えを渡してもらうことができるはずです。
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給与明細を確認する:
雇用保険料が給与から天引きされていれば、給与明細の控除項目に「雇用保険料」の記載があるはずです。ただし、給与明細への記載義務はないため、記載がなくても加入している可能性はあります。あくまで目安として確認してください。
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ハローワークに問い合わせる:
会社の対応が不明確な場合や、会社に直接聞きにくい場合は、ご自身の住所地を管轄するハローワークに問い合わせることができます。本人確認が必要になりますので、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書を持参(または電話で指示された方法で本人確認情報を伝える)して、「自分の雇用保険の加入状況を確認したい」旨を伝えてください。この際、可能であれば被保険者番号が分かるとスムーズですが、分からなくても氏名、生年月日、以前の勤務先などの情報から調べてもらうことが可能です。
加入条件を満たすのに会社が手続きしない場合の対処法
雇用保険の加入条件を満たしているはずなのに、会社が手続きをしてくれない、あるいは「うちは加入させていない」と言われた場合は、どうすれば良いのでしょうか。これは事業主の義務違反となります。
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まずは会社に確認・相談する:
もしかしたら、会社が加入条件を誤解している、あるいは手続きを忘れているだけかもしれません。まずは、ご自身の労働時間や雇用見込みが雇用保険の加入条件を満たしていることを伝えた上で、「雇用保険への加入手続きをお願いします」と丁寧に相談してみましょう。この際、労働条件通知書や雇用契約書など、ご自身の雇用条件が分かる書類があると話を進めやすいです。
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ハローワークに相談する:
会社に相談しても対応してもらえない場合や、対応が難しい場合は、管轄のハローワークに相談してください。ハローワークは、事業主が適切に雇用保険の手続きを行っているかを確認・指導する役割も担っています。ハローワークに相談する際は、ご自身の雇用条件が分かる書類(労働条件通知書、タイムカード、給与明細など)を持参すると、状況を正確に伝えられます。ハローワークから会社へ事実確認や加入指導が行われることがあります。
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さかのぼって加入手続きは可能か?:
雇用保険の加入条件を満たしていたにも関わらず加入できていなかった場合、条件を満たした時点までさかのぼって加入手続き(遡及適用)を行うことが可能です。ハローワークに相談し、必要な手続きについて指導を受けてください。通常は、事業主がさかのぼって手続きを行うことになりますが、事業主が協力しない場合は、ハローワークが職権で手続きを行うこともあります。遡って加入が認められれば、本来負担すべきだった保険料もさかのぼって徴収されることになりますが、これは将来的に失業給付などを受けるために必要な手続きです。
離職票がない、雇用保険の加入状況が不明な場合の対応
転職活動などで、以前の会社の雇用保険加入状況を知りたいが、離職票が見つからない、あるいは加入していたかどうかも曖昧…というケースもあるかもしれません。
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前職の会社に依頼する:
まずは、前職の会社に連絡し、離職票の再発行や、雇用保険に加入していたかどうか、被保険者番号などを確認してもらうのが最も確実です。会社には離職票を発行する義務があります。
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ハローワークに確認・手続きを依頼する:
前職の会社が既になかったり、連絡が取れなかったり、協力してもらえない場合は、ご自身の住所地を管轄するハローワークに相談してください。ハローワークで、過去の雇用保険の加入履歴を調べてもらうことができます。この際も本人確認が必要となります。加入履歴が確認できれば、被保険者番号を知ることができ、また、必要であれば離職票の発行手続きについても相談できます。
雇用保険への加入は、労働者の権利であり、事業主の義務です。ご自身の雇用条件が加入条件を満たしているかを確認し、適切に手続きがされているか把握しておくことは非常に重要です。もし疑問や不安がある場合は、まずは会社の担当者に、それでも解決しない場合はハローワークに相談するようにしましょう。